数多くの国際広告賞の中でも、歴史あるアワードのひとつとして知られる「ニューヨークフェスティバル(NYF)」。同賞は、真のトップクリエイティブを賞賛し、広告クリエイティブ領域の活性化・健全な成長を後押しすることを目的としており、そのために、透明性の高い審査システムの整備や、クリエイティブ人材を育成するプログラムの設置などに力を入れている。来日中のNYFトップ、マイケル・ルーク氏に話を聞いた。
─NYFはどのようなアワードですか。
設立は1957年で、クリエイティブを称賛する国際的プラットフォームの中でも伝統と歴史があるものだ。我々は真の『クリエイティブの王者』を見極めるべく、この業界の専門家が知見を持ち寄り、議論する環境を整備することに注力してきた。革新的で新鮮な作品が評価されれば、クライアントもそうしたアイデアに対してオープンになる。革新的な提案をするエージェンシーを信頼するようになるし、そうすればエージェンシー側も自信を持って新しいアイデアを提案できるようになるだろう。ビッグアイデアやフレッシュなアイデアに光を当てることは、エージェンシーにもクライアントにもメリットをもたらすことにつながるのだ。
─NYFは透明性の高い審査システムが特徴だそうですね。
私たちの審査システムは2つの方法で構成される。ひとつは「グランド・ジャッジ」。約400人の審査員がカテゴリー毎に作品をオンライン上で審査し、ショートリストまで選出する。昨年の審査員の出身国は48カ国におよび、NYFの国際性を担保している。2つ目は「エグゼクティブ・ジャッジ」。世界のチーフ・クリエイティブ・オフィサー20余人が一堂に会し、ショートリストから受賞作品を選出するもので、全カテゴリー横断で行われる。つまり、すべてのカテゴリーを同じ審査員が評価するということだ。さらに、全作品を「Concept Idea(アイデア)」「Brand Relevancy(ブランド)」「Production Execution(アウトプット)」という3つの共通基準で評価する点も、他のアワードにない特徴と言えるだろう。
─審査結果をエントリー企業にフィードバックする仕組みがあると聞きました。
国際広告賞に参加しても、ほとんどの場合、「受賞したかどうか」という結果でしか作品を評価することができない。審査のデータを提供することで、彼らは自身の作品をさまざまな角度から評価し、次につなげることができる。データを元に「何が良くて、何が悪かったのか」をエージェンシーとクライアントとで理解し、改善の余地がどこにあるのかを考察するためのリソースとして活用できるのだ。
─クリエイティブ人材の育成にも取り組んでいるそうですね。
世界各地の大学と、教育ネットワークおよびメディアパートナーシップを構築している。大学と提携して設立したメディアセンターでは、NYFの最新の受賞作品をすべて閲覧できるようにしており、学生はそこからインスピレーションを受けることができる。年に2~4回の頻度でトークイベントも開催しており、業界のプロフェッショナルを招いて学生に向けて講演を行っている。また、若いクリエイティブ人材のためのコンペティションの場を設けている。「自分たちの活動の認知を高めたいが、予算が潤沢でなく、大手エージェンシーに発注するのは難しい」というNPOと提携し、学生にその提案の機会を開放するものだ。
─日本のエージェンシーにメッセージを。
クリエイティブを評価する、グローバル視点の基準や、世界のクリエイティブが目指す方向性を知ることは非常に重要だ。ニューヨークは世界で最も国際的な都市であり、そこを拠点とするNYFは、世界で最も国際的なアワードであると自負している。優れたアイデアに光を当てることは、広告界に刺激を与え、広告主企業を教育し、既存の枠組みを取り払って革新的なアイデアを受け入れる土壌をつくることにつながる。優れた「ラーニングツール」として、NYFをぜひ活用して欲しい。
ニューヨークフェスティバル
エントリー期限:2017年1月31日
※応募は2016年1月1日~2017年5月に公開される広告に限る
※詳細はホームページより http://advertising.newyorkfestivals.com/