広告マーケティングの専門メディア

           

宣伝会議サミット2016

改革と挑戦がブランドの未来を創る-旭酒造×スープストックトーキョー対談

旭酒造 × スープストックトーキョー

嗜好が多様化し、テクノロジーを活用した個客対応が求められる時代。マーケターには市場のダイバーシティに真摯に向き合う姿勢が不可欠です。まずは自社のブランドのアイデンティティを見つめ直し、広大な市場の中から顧客を見つけ出す。その上で、多様な価値観を視野に入れたマーケティングシナリオを考える。そこではデータを通じた顧客理解に加え、顧客の共感を生み出すクリエイティビティが必要とされます。今年の宣伝会議サミットでは、テクノロジー活用とクリエイティビティを武器にした、ダイバーシティ時代のマーケティングを志向する経営者やマーケターを招き、マーケティングの最新潮流について議論を交わしました。講演登壇者の皆さんに「2017年の注力テーマは…」というテーマで寄せていただいたコメントにも、ご注目ください。

「宣伝会議サミット2016」のオープニングでは、旭酒造の桜井博志会長とスープストックトーキョーの松尾真継社長が対談。桜井会長は山口県山間の小さな酒造を継いだ後、「純米大吟醸」への製造特化や、杜氏制度を廃止するなど常識破りの変革と革新で日本酒ブランド「獺祭」を生み出し、今ではニューヨーク、パリなど世界17カ国で愛飲されているまでに育て上げた。

一方、スープストックトーキョーというブランドは、三菱商事の社員だった遠山正道氏が起案した企画書「スープのある一日」から始まった。2年後「スープストックトーキョー」1号店を出店。翌年三菱商事ベンチャーとしてスマイルズを設立、遠山氏が社長に就任。以降、遠山氏のカリスマ的経営手腕によって成長。今年スープストックトーキョーを分社化し、遠山氏の懐刀と呼ばれていた松尾氏が社長に就任した。分野は異なるが、いわば革新的なブランドの創成者と継承者の対談となった。

社会に必要とされなければ 企業の存在理由はない

─お二方とも、事業展開や経営においてマーケティング的な手法を特に取り入れてはいないと聞いていますが。

桜井▶ マーケティングに否定的な考えを持っているわけではないのです。ただ、この写真をご覧ください。パリの凱旋門近くにある店で獺祭を愉しんでいる方の写真です。まさにこの笑顔がすべてなのです。お客さまが笑顔になる、幸せな気持ちなるものをお届けすれば、また飲んでいただける。日本の市場の何パーセントを獲得しようとか、海外でのシェアを倍増させようとか、私どもはそういうことを目的にしてブランドを展開していません。お客さまに幸せな時間を過ごしてもらって、結果対価をいただく、そういう考えに徹しております。だから、極端に聞こえるかもしれませんが、社会から必要とされなければ、企業は消えていくべきだと思っています。

松尾▶ 私どもの会社でもマーケティングという言葉は使いません。先日、ある記者の方に、「大手コンビニがスープ事業に乗り出すそうで、今後のシェア競争についてどう思われますか」と聞かれたのですが、そんなことは意識したこともありません。結局、その企業が何を実現したいのかが最も大事なところで、桜井さんがおっしゃる通り、社会が必要とするサービス・製品を提供して、社会から価値があると共感していただけなければ、私も意味がないと思います。私どもの理念は明確で、「世の中の体温を上げる」です。お客さまに美味しい温かいスープを食べてもらって体を温かくしてもらうという意味も含まれますが、例えば仕事のミスで落ち込んでいたとき、笑顔の接客や一所懸命に働くバイトさんを見て元気をもらったとか、私どものブランドに触れていただき …

あと65%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

宣伝会議サミット2016 の記事一覧

宇多田ヒカルのマーケティング戦略に迫る-ユニバーサル ミュージック
宣伝と広報の軸を融合-ハナマルキのストック型プロモーション戦略
成熟市場の中で話題と共感を創り上げる-モンデリーズ・ジャパンの戦略とは
改革と挑戦がブランドの未来を創る-旭酒造×スープストックトーキョー対談(この記事です)

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する