これまで広告・マーケティングの世界には、“解明できなくても仕方がない”と思われてきた、数々のブラックボックスが存在する。しかし、その「壁」を打ち破る、技術革新が生まれつつある。
低コストで一人ひとりの消費者にアプローチできるeメールの活用が浸透し、消費者が企業から受け取るプロモーションメールの量も増大。開封率低下の問題が起きている。こうした環境でダイレクトメール(DM)や商品サンプリングなどのアナログかつフィジカルなコミュニケーションへの関心が再び高まりつつある。
しかし効率的にリーチを獲得できるデジタルが普及したことで、コストのかかるDMやサンプリングにもこれまで以上に投資効果の改善が求められている。そこで力を発揮しているのが、データだ。データを用いて、より精緻なターゲティングをしたうえで、DMを発送する。ダイレクトメールが今また、進化を始めている。
NTTドコモ(ドコモ)とインテージが設立したドコモ・インサイトマーケティングもデータとアナログの販促手法の掛け合わせの可能性を感じている企業のひとつだ。ドコモの7000万人規模の顧客基盤とインテージの情報活用ノウハウの融合による、リサーチやプロモーション事業の企画を手掛ける同社。ドコモ運営の「dポイントクラブ」会員、約5400万人のうち、約356万人に対してサンプリングやDM送付のプロモーション、リサーチのメニューなどをドコモのプレミアパネルとして提供。同社、コミュニケーションサービス部長の後藤宣吉氏は「プレミアパネルのプロモーション対象者はリサーチへの協力の意思を示し、属性・趣味嗜好を登録いただいている方。登録時のアンケートにより、80種類以上の項目によるターゲティングが可能。現在は健康食品や美容関連商材での利用が多い」と話す。また同社では、事前にリサーチプログラムを組み合わせることでリサーチの結果を踏まえて、商品に対して関心の高そうな消費者だけを対象にDMを送ることができる、リサーチプロモーションも行っている。
さらには、約4億のオーディエンスデータを保有する、インティメート・マージャーと協力。前述の356万人の内、同社の提供するdi-PiNK DMPの許諾者である約120万人についてインティメート・マージャーのデータを連結させることで、オンライン上の行動まで把握したうえで、アプローチできる体制を整えた。後藤氏は「潜在顧客にアプローチし、新規開拓を行う上でも、事前のデータ分析により、さらに精度高く実行することが可能になっている」と説明する。
データを使って消費者をより深く知ることで、アナログなプロモーション手段も、まだまだ効率を高めることができる…。ダイレクトマーケティングにも、いま進化の波が起きている。
【取材を終えて】
今年に入ってデータ、さらに小ロット印刷の技術の普及で、DMが進化を遂げているという声を聞く機会が増えている。今回取材した取り組みも、まさにそうした潮流のひとつだろう。また、スマートフォンを利用した位置情報、ポイントプログラムを活用したリアル店舗での購入など、昨今オンラインでの行動に留まらず、リアルな場での行動捕捉がマーケティングの世界で注目されつつある。オンライン、オフライン問わず、データの取得はますます進んでいく。DMが進化をしているように、データの活用が既存のプロモーション手段を変革させていく可能性は大きい。
編集協力:株式会社インティメート・マージャー