2015年11月1日に設立され、1周年を迎えたSupership。ブランド広告主のデジタルマーケティング支援をますます強化するため、現在、同社が急速に進めているサービス拡充・組織変革とは。広告事業本部と、注力事業として新たに組織化されたDMP推進部・ブランド戦略部を支える、宮本裕樹氏、小林秀次氏、八重樫健氏に聞いた。
ユーザーデータやアドテクノロジーを活用することは、ブランド広告主のデジタルマーケティングにおいて、もはや当たり前のこととなりつつある。しかし、それを明確なマーケティング戦略の下、事業目標の達成のために効果的に運用できているかというと、まだ道半ばという企業も少なくない。
企業は「デジタルマーケティングを行いたい」のではなく、「デジタルマーケティングを、ブランド価値の向上やビジネス上の成果につなげたい」のだ。Supershipは、そんなブランド広告主のデジタルマーケティングを支援すべく、サービスの拡充、組織体制の強化を急ピッチで進めている。
「データ」、「プロダクト」、そして「人」。同社のデジタルマーケティング支援事業を形づくる、これら3つの柱をそれぞれ強化し、ブランド広告主のマーケティング上の課題・ニーズに応え、さらに事業成長へとつなげることを目指している。
(1)データ
PCからスマホアプリまで
KDDIのグループ会社であるSupershipの、デジタルマーケティング支援企業としての最大の強みは、何と言っても同社が保有する高精度かつ豊富なユーザーデータと言える。独自のDMPに蓄積されたデータは、性別・年代・居住地といった属性データはもちろん、興味関心やショッピングの決済利用ランクまで多岐にわたる。DMP推進部の小林秀次氏は、「DMPとは、広告配信のためのデータを蓄積する“箱”ではなく、ユーザーを理解するためのプラットフォーム」とした上で、SupershipのDMPが目指す方向性について次のように話す。
「PCからスマートフォンへ、さらにブラウザからアプリへ……ユーザーと企業の接点は広がり続けています。 当社では、デバイスやチャネル毎に分断されることなく、あらゆる接点で得られるデータをつなぎ合わせ、『一人のユーザー』として捉えることができるようになりました。特に、ブラウザのCookieとアプリのユーザーIDのつなぎ込みが実現できる企業はまだ少なく、ここにSupershipの強みがあると考えています。さらに、オンラインとオフラインのデータをつなげることができるようになれば、ユーザーをより正確に・深く理解できる。するとデータは、デジタル広告の効果・効率を向上させるためだけでなく、マーケティング全体の効果向上のために活かせるものになるのです」。
Supershipが考える、そうしたデータの活用方法を方向づける取り組みとして、新しいDMPプラットフォームの構築も進めているという。「SupershipDMP(仮)」は、(1)オンライン↔オフライン、ブラウザ↔アプリ、ファーストパーティー↔サードパーティーといったあらゆるデータをつなぎ、(2)そのデータを可視化してユーザー像を理解し、(3)実際のマーケティングに活用するという、同社が理想とするデータ活用のあり方が具現化されたプラットフォームだ。
(2)プロダクト
データを“宝の持ち腐れ”にしない
しかし、データがあるだけでは、企業のデジタルマーケティング推進には寄与できないと、広告事業本部の宮本裕樹氏は話す。「有用なデータを最大限に活かすためには、フレッシュなデータを統合・加工し、広告配信をはじめとする具体的な施策をカジュアルに実行できるプロダクトの開発が不可欠でした」。
同社の最も新しいプロダクトとしては、来春に提供開始予定の「トレーディングデスク向けプラットフォーム」がある。ディスプレイの予算のアロケーションがソーシャルメディア側に流れるトレンドにおいて、「ScaleOut DSP」や「AppVador」では、PMPの取り組みを通してプレミアムな配信先の開拓に注力してきた。「トレーディングデスク向けプラットフォーム」により、「ScaleOut DSP」で活用してきたものと同様のデータを活用して広告を配信できるようになるという。
「保有データを拡充するのと並行して、配信先をソーシャルへと広げることが近年の課題でした。ソーシャルメディアの多くはスマートフォンアプリにユーザーが滞在していますが、国内外で提供されているほとんどの広告配信プラットフォームは、Web面への配信を中心に置いて構築されているのが現状です。当社はスマートフォンアプリを中心に月間250億インプレッションの在庫を有するSSP『AdGeneration』を運用しており、これを活用した広告配信が可能です。今後は、スマートフォンアプリを軸にしたプロダクト開発が必要で、そこでも当社の強みが発揮できると考えています」。
(3)人
導入から日々の運用へ
Supershipが新たに力を入れ始めているのがブランド広告主のデジタルマーケティング推進をサポートできる人材の獲得・育成、および組織体制の整備だ。マーケティングとデジタル広告運用、どちらにも専門性を持つ人材が、マーケティング戦略の策定から具体的な施策の実行まで、クライアントをトータルでサポートする体制を目指す。10月に発足した「ブランド戦略部」は、そうした人材を集めた新部門だ。
「データはあるけれど使い方がわからない、ツールは導入したものの運用できていない……データ、プロダクトを独自に抱えるSupershipだからこそできる、戦略からデータ、テクノロジーまでをトータルで支援する体制を提供することで、こうした事態を避けられるのではと考えています」と、ブランド戦略部を統括する八重樫健氏は話す。
「マーケターが、マーケティングに本気で取り組むべき時が来ているのでは」と、八重樫氏は指摘する。「データと、それを活用するプラットフォームが多様化したことで、できることは格段に増えました。一方で、デジタルマーケティングの日々の業務負荷は格段に増大しており、『ブランド価値を高めるために、必要なことは何か』という、より本質的な業務に時間や労力をかけられなくなっているのが現状だと思います。
その業界全体の課題に対して、まず我々は「データ」と紐付いた「トレーディングデスク向けプラットフォーム」によってその負荷部分を軽減し、マーケターが本質的な課題解決に集中できる環境を整えられると考えています。また先ほども話に出たように、ユーザーと企業との接点が広がり続ける今、企業はあらゆる顧客接点を一元管理し、顧客起点でコミュニケーションをする必要があります。カスタマージャーニー全体を俯瞰し、各チャネルに最適な予算を配分し、最適な施策を実行するためには、マーケターがテクノロジーに振り回されるのではなく、マーケティングに主体的に取り組むことが求められるのです」。
とは言え、メディア別の縦割り組織の中で、それを実行するのは容易ではない。「データやテクノロジーをともに運用して実績を出しながら、経営層にデジタルの重要性を翻訳して伝え、理解してもらうことで、組織を改革し、ビジネスインパクトを創出するところまでサポートすることが、ブランド広告主から求められています」と八重樫氏。そして、そのサポートは、データ・プロダクト・人の3つをトータルに提供できる企業だからこそ実現できるものだと宮本氏は強調する。
「アドテクノロジーベンダーではなく、課題を共有し、目標達成に向けて協業できるデジタルマーケティングパートナーとして、ブランド広告主と向き合っていきたい」と結んだ。
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