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宣伝会議賞

第54回「宣伝会議賞」審査員が登壇 コピーで世の中を少しハッピーにする

10月14日、東京・渋谷ヒカリエで第54回宣伝会議賞の審査員によるトークショーが開催された。当日は100人以上が来場。第一部には博報堂の下東史明氏、第ニ部には電通の磯島拓矢氏が登壇した。

当日の来場者数は100人以上!学生から社会人まで幅広い層が熱心に講演に耳を傾けた。

第一部
企業が伝えたいことと消費者が聞きたいことの
重なり合う部分を見つけるのがコピー

第一部では博報堂の下東史明が登壇。「見る人に元気を与える広告コピーのつくり方」という講演テーマを分解し、それぞれのパーツから学び取れるコピーの書き方のヒントを解説した。

博報堂下東史明氏
コピーライター。主な仕事に、MINTIA「俺は持ってる」、エアーサロンパス「スポーツが好きだ、大好きだ」、アクオス「活きる力を起動する」、一本満足バー、イエローハット、カルピスウォーター「絶対いい夏にしよう」、JALカード。コーセーFasioなど。著書に『あたまの地図帳』。TCC審査委員長賞・新人賞・ファイナリスト、ヤングカンヌ日本代表など受賞多数。

自覚を持って言葉と向き合う

まず、「見る人」について。「広告の受け手は老若男女、居住地もライフスタイルなどの生活様式もさまざまな人が対象になる。無数にいる『誰か』ではなく、自分なりの対象者を明確に決めるとコピーが考えやすくなる」と下東氏。そのうえで、対象者の立場になってコピーを考えることを勧める。「例えば、自分よりも年上の人が対象の商品だと、対象者の気持ちになるのは難しいと思うかもしれない。その場合は、自分の未来、あるいは過去に置き換えて考えることで、対象者の気持ちが理解できるだけでなく、隣の応募者とは違う個性も出てくる」と下東氏は話す。

次に「元気を与える」について。「“元気”とは『なる』もので、『与える』ものではない」と言葉の不正確さを指摘した上で、コピーを考えるときは、自覚を持って一つひとつの言葉に向き合うことが大事だという。言葉に対して無自覚になってしまう理由は、「よくあるフレーズを記号として使い、言葉の精査を行っていないのではないか。覚えていて欲しいのは、『意味』と『記号』を分けて言葉を考えること。受け手の心に響くのは、『記号』として使われた言葉ではなく、『意味』のある言葉だ」と述べた。

3点目の「広告コピー」に関しては、下東氏は「企業や商品が経済活動を営む上で必要な言葉」であると定義。しかし、企業が伝えたい思いと消費者が聞きたい思いにはギャップがある。「消費者が聞きたいのは、『得だと感じる』こと。コピーとは、企業や商品が訴えたいこと、消費者が聞きたいことの2つの円が重なっている部分を見つけることだ」と話す。

さらに、広告コピーのつくり方は大きく2つに分類することができるという。ひとつは「積み上げるつくり方」で、もうひとつは「ひらめくつくり方」だ。下東氏は、「積み上げるつくり方で大切なのは、まず『誰に』『いつ』『どの媒体で』そのコピーを伝えるのかということ。ひとつずつ細かく分解して考えていくのがまさに積み上げの作業だ。次に、コピーの検証をすること。作品を少なくとも三度検証することで、徐々にコピーが磨かれていく」と話す。後者の「ひらめくつくり方」については、「訓練によって培われるもの」と下東氏。ひらめくようになるには、「想像力を鍛えることも大切だが、『積み上げ』を行いながら『ひらめき』を待つのが、コピーとの向き合い方だ」と述べた。

最後に、会場から「コピーライターは言葉を考えるときに、フォントなど視覚的な要素を意識してつくるのか、聴覚的な要素を意識しながらつくるのか」という質問が寄せられた。下東氏は両方あり得るとしたうえで、「コピーは記憶されないと意味がないので、記憶されるためには響きが良い、なるべく多くの人が良いと感じる響きの言葉をチョイスするべきだと思う」と締めくくった。

第二部
いま広告には、「Social」が求められている

第二部では、電通の磯島拓矢氏が登壇。「社会に必要とされる広告を考える」をテーマに、自身が手がけてきた作品を例にとりながら、社会における広告の役割について話した。

電通磯島拓矢氏
クリエーティブディレクター/コピーライター。1990年電通入社。主な仕事に、旭化成企業広告「昨日まで世界になかったものを。」、旭化成ヘーベルハウス「考えよう、答えはある。」、本田技研工業オデッセイ「いいクルマが好きだ。男ですから。」、KIRINのどごし〈生〉「ごくごく、幸せ。」、大塚製薬ポカリスエット「自分は、きっと想像以上だ。」などがある。TCC賞グランプリ、ADC賞グランプリなど受賞歴多数。

広告を通じて新たな価値をつくる

今回の講演テーマ「社会に必要とされる広告を考える」は、「Social」という一言に集約されると磯島氏。「『Social』はこの4 ~ 5年で急速に広告界に浸透してきた言葉。非常に大切なテーマであり、キーワードだと思っている。今日は『Social』という言葉が広告やコミュニケーションにとって、どう大切なのか、これまでに手がけた広告を見ながら考えたい」と話した。

一般的に広告の世界で「Social」という言葉を使う時には2つの場合があるという。ひとつが「CSR」など、企業の社会貢献活動の文脈で使われる意味合い。企業が行うCSR活動を広告で伝えたり、商品を通じた寄付の仕組みをつくることを「Social」という言葉で表現することがある。

もうひとつは、「ソーシャルメディア」という意味。ソーシャルメディアをどう使うかは、広告において、もはや欠かせない視点になっていると磯島氏。一方で、「僕自身がコピーライターとして『Social』と向き合うときには、『企業や商品にいかに社会性を持たせるか』を考えたい。これは言い換えると、『この企業や商品が、どれだけ社会に必要な存在であるか』ということをしっかりと考え、言葉や広告にすること」と自身の仕事における「Social」との向き合い方を話した。

企業同士が切磋琢磨しあい、より良い商品・サービスが生みだされていくのが基本的な資本主義経済のあり方。磯島氏は「広告をつくる際も差別化が基本」としながらも、「それはそれですごく大事だし、間違ってはいないが、もう少しだけ俯瞰して、競合他社の商品も包括する今の世の中、今の社会にとって『うちの商品が必要なんです』『うちの会社が必要なんです』というポイントを考え、それを表現するやり方があっても良いのではないか」と投げかけた。

磯島氏がこのように考えるきっかけとなった仕事は、日立製作所の企業広告「つくろう。」で、また、広告の対象となる企業や商品を俯瞰することの大切さを強く感じたのは、旭化成の企業広告「昨日まで世界になかったものを。」をつくったときだという。

社会との接点づくりは、広告が担う最も重要な役割と言える。例えば、2011年の九州新幹線開通のテレビCMのコピーは、「祝!九州新幹線」ではなく「祝!九州」。新幹線が停車する各駅に、地元の人々に集まってもらい、その様子を撮影した。こうすることで「九州新幹線が開通して、九州全土がつながる」という社会性をより強く感じてもらうことを狙ったという。

また、「リオオリンピックの広告を手がけた際は『人々がオリンピックに対して感じる価値が下がってきているのではないか?』という社会全体の風潮を意識して制作した。また、スカパー!の企業広告は、好き嫌いだけで語られがちなコンテンツに、その好き嫌いを超えた社会性という価値を付与する試み」と磯島氏は話す。

磯島氏は最後に明治大学の齋藤孝教授の「広告は社会の『共通知』をつくる役割」という言葉を紹介。「この考え方に沿うと、広告は、社会に役立つ機能を常に内包している。そんな広告をつくる意義と責任の大きさを改めて見つめてみるのも良いと思う」と講演を結んだ。

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