顧客第一主義への転換が大きなターニングポイント 進化し続けた50年
1974年、日本初のコラーゲンを配合した基礎化粧品として誕生し、2024年に50周年を迎えた「ドモホルンリンクル」。漢方の製薬会社であった再春館製薬所が、「人間も自然の一部」という漢方の考え方と、同社の科学技術を掛け合わせ、化粧品開発に挑戦したことからブランドの歴史が始まった。
ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略
温泉の世界観にこだわり、日本の情緒を追求してきた「旅の宿」。入浴剤市場が伸び悩む中、売上げを伸ばし続ける理由とは―。時代が変わっても愛され続ける理由を探る。
クラシエ(当時カネボウ)の入浴剤「旅の宿」が生誕30周年を迎えた。発売された1986年当時は温泉ブームのまっただなか。「当時の開発担当者は、可能な限り各地の温泉に足を運び、湯の感触や色、香りなどを確かめたり、温泉を採取して成分を徹底的に追求していたようです」(クラシエホームプロダクツ小林慎太朗氏)。幾度にも渡る調査を行い、温泉の湯を再現するだけでなく、温泉の世界観にこだわり、日本の情緒を追求した。当初から温泉情緒を楽しめる成分として、温浴効果で体を芯まで温める「温泉ミネラル」のほか、現在では、温泉の保湿成分「メタケイ酸」、温泉源泉水の香気成分「温泉含有香気成分」も配合するなど、コンセプトはそのままに、処方は進化。家庭のお風呂でも温泉気分を味わえる「旅の宿」を展開している。
近年、入浴剤市場の伸び率は鈍化している。シャンプーやコンディショナーで1800億円ほど市場規模がある中で(2016年クラシエ調べ)、入浴剤市場は400億円とそう多くない。それにも関わらず、『旅の宿』の売上は伸び続けている。小林氏はその理由を、「店頭プロモーションに力を入れ、ロイヤルユーザーである30~40代の主婦層を中心に、新規顧客の開拓ができているからではないか」と分析する。また、他社との違いもこう話す。「移り変わりの激しい入浴剤業界で、『旅の宿』は30年間ぶれることなく『変えない』という選択をしてきた稀有なブランドです。変えないことは新鮮さがないように見えることもありますが、ロングセラーを続けていくには、製品の本質を地道にプロモーションし続けることも大切だと実感しています」。
「旅の宿」の信念が30年間ぶれていないことは、パッケージにも表れている。版画家の木田安彦氏が手掛けたパッケージデザインは、時代に合わせて微調整はあるものの、ロゴもデザインコンセプトも30年間変えていない。商品も …