広告マーケティングの専門メディア

           

成熟市場に必要な「理解」を促す コミュニケーションの技術と手法

「伝える」の新しい作法をつくり出す人たち

「伝える」と一言で言っても、その手段・表現はさまざま。特に昨今はテクノロジーの発展によりその方法が無限に広がりつつあります。従来型の「伝え方」に留まらない、新しい「伝え方」に挑戦するキーマンに迫りました。

PIONEER 01 データビジュアライゼーション
データそのものではなく、その根底に紐づく「人間の物語」に感動がある

太田雄貴選手という「人」の軌跡をデータとして取得し、可視化した「Fencing Visualized」。

僕はデータを「そのとき、そこに、その人が存在した痕跡」という視点で捉え、エモーショナルなストーリーを発見し、表現しているのだと思います。生活の中にデジタルテクノロジーが密接に関わるようになったことで、人間の行動の多くがデータと紐づくようになり、それを容易に取得できるようになりました。何かとデータがもてはやされる現代ですが、データそのものに魅力があるのではなく、その裏側に人間を、物語を感じるから魅力的なのだと考えています。

データビジュアライゼーションには、データの可視化や表現の視点にアイデアがある場合と、データの取得の視点にアイデアがある場合の2パターンがあります。僕が手がけたプロジェクトで言えば、前者の例が、本田技研工業「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」や国立競技場ファイナルイベント「Reviving Legends」。後者の例が、フェンシング・太田雄貴選手とのプロジェクト「Fencing Visualized」です。これは、フェンシングという競技を人々にもっと理解してほしいという課題があって、その解決策としてデータを活用しました。複雑なルールや選手の動作の意味を、見ている人に直観的に理解してもらうのに有効なデータを取得し、可視化しました。企業やブランドのコミュニケーションにおいて、データを活用した表現を効果的にするのは、データが、その取得元が紡いできた物語に密接に結びついているという視点です。アイルトン・セナの走行データを取得したのはホンダですから、そこから生まれた物語を競合ブランドのコミュニケーションに適用することはできません。データは、その主となる人や想いの足跡。それを描画することは、その人固有の物語を描くことに直結しやすいのです。企業やブランド・商品のそばにある、知られていなかった・理解されていなかった人のストーリーを目に見える形にすることで、その裏側にある理念や思いを人々が理解し、魅力を感じてくれる可能性があると思います。

商品を受け取る側の人のデータも、ストーリーになり得ます。その商品を買うことで、その人の心にどんな感情が湧き起こり、暮らしにどんな彩りを与えるのかが描ける。それが …

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

成熟市場に必要な「理解」を促す コミュニケーションの技術と手法 の記事一覧

「伝える」の新しい作法をつくり出す人たち(この記事です)
「解説動画の効果を引き出すコミュニケーション設計」(1)
人間の「理解」を科学的に捉える-重要なのは「理解した」という満足感の演出
複雑化する商品・サービス―マス広告だけでは伝わらないコミュニケーション環境(4)
複雑化する商品・サービス―マス広告だけでは伝わらないコミュニケーション環境(3)
複雑化する商品・サービス―マス広告だけでは伝わらないコミュニケーション環境(2)
複雑化する商品・サービス―マス広告だけでは伝わらないコミュニケーション環境

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する