多様な生活環境で複雑化する意思決定プロセスを俯瞰的に捉える
創刊900号を迎えるにあたり、改めまして読者の皆さま並びに、月刊『宣伝会議』にご協力をいただいております皆さまにはこの場をお借りし、厚く御礼申し上げます。
マーケティングは、「メタ」で動かす。
日本政府の成長戦略の一つにも掲げられる「第4次産業革命」。IoTや人工知能を活用した産業構造の変革は、私たちの暮らしや消費に影響を与えるのでしょうか。
インターネットや人工知能(AI)といったデジタル技術を駆使して、ものづくりに革新をもたらそうとする「インダストリー4.0」。2013年4月にドイツが国を挙げたプロジェクトとして提唱し、第4次産業革命とも呼ばれる。この考え方によって「製造業のあり方が革新的に変わる」とさまざまなメディアで取り上げられているのを、目にしたことがあるかもしれない。
しかし、第4次産業革命によって変わるのは、製造現場だけではない。販売も含めたバリューチェーンそのもの、また企業が「何を顧客に提供するか」自体に変化をもたらすものだという。「決定版インダストリー4.0―第4次産業革命の全貌」の著者、三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際営業部副部長 尾木蔵人氏によると、第4次産業革命の背景には3つの大きな環境変化がある。
インターネットの爆発的な普及、またスマートフォンによって、多くの人がインターネットに「つながった」。同時に、コンピューターの情報処理能力が格段に進化し、情報の処理スピードが速まり、処理コストが下がった。「産業技術総合研究所の、関口智嗣情報・人間工学領域長によると、30年前のコンピューターの計算速度をカメの歩くスピードにたとえるなら、現在の計算速度は光速に達するほど進化したといいます」(尾木氏)これによって、「ビックデータ」と呼ばれる膨大な情報を、以前と比べて容易に処理できるようになった。
インターネットを通じてデータの管理ができる「クラウドコンピューティング」の普及がもたらす役割も大きい。「これまではデータやソフトウェアを利用するために、大きな設備を持たなければなりませんでした。しかし、最新の技術を用いれば、いつでもどこでもネットにアクセスさえできれば、大量の情報を取り扱うことが可能になったのです」(尾木氏)。
さまざまな情報を感知、収集するために必要なのがセンサーだ。技術の進化によって、このセンサーが小型化・低価格化した。「モノ」や空間にセンサーを設置し、消費者の動向をとらえることが簡単にできるようになる。
これらの環境変化によって、今後はセンサーを介してモノとモノが自らデジタルネットワークでつながる、IoT(Internetof Things:モノのインターネット)社会がくると予想されているのである。
ドイツが取り組む「インダストリー4.0」では ...