消費者が日常生活を過ごす空間が、デジタルへとシフトしている。こうした環境ではブランドのコミュニケーションもマスからデジタルへのシフトが必要だ。では、そのシフトはどう実現していけばよいのか。広告主企業同士のディスカッションを通じ、課題解決の方向性を導き出す。
冒頭挨拶とともにデジタルオリエンテッドな価値提供によるブランドのファン創出・育成について説明する、オプトの執行役員、中野宜幸氏。
ブランド価値は「与える」から「感じる」へ
2016年7月、オプトと宣伝会議・マーケティング研究室は共同で「デジタル時代のブランドコミュニケーション戦略を考える研究会」を発足。オプトのデジタルブランディングプロジェクトの一環である。広告主企業同士がディスカッションする場を全3回開催、その集大成として今年の末にはセミナーを実施、研究成果を報告する予定だ。7月8日にはライオン、クラシエホームプロダクツ、コーセーの3社が参加をし、デジタル領域におけるブランドコミュニケーションのあり方を議論した。
研究会には中央大学ビジネススクールの田中洋教授も参加をし、会の冒頭では田中教授より現代のブランドを取り巻く課題について講演があった。ブランドマネジメント制の浸透に伴い、プロダクトブランド最適化の活動も増加。議論に際し、改めてコーポレートブランドとプロダクトブランドの違いや互いの関わりについての整理が必要との考えが話された。
その後、オプトでデジタルブランディングのROI可視化を専門とする部門を立ち上げ、数々の企業に対するマーケティングコンサルティングを手掛けてきた、オプトの伴大二郎氏が登壇。「デジタル時代に、ブランドイメージはどうつくられるのか?」と題して講演した。社会の成熟化に伴い、市場はサービスエコノミー、エクスペリエンス・エコノミー、そして現代のソーシャルエコノミーへと変遷し、ブランド価値も企業が「与える」ものから消費者が「感じる」ものへと変化している。その中で、SNSやスマホを始めとしたデジタルの役割が増していると指摘。「行動データが取得でき、顧客を理解したマーケティングプランが立てやすい環境も整っているため、この利点は生かしていくべきだ」とPDCAの視点から説明した。
参加企業からは「マスメディアだけでは、特に若年層のリーチが難しくなっている」(コーセー・小林祐樹氏)という発言が象徴的だったが今回、参加の3社はマスプロダクツを扱うメーカーであり、テレビCMの投下が流通事業者への営業の交渉材料になっている面も強い。「必ずしも消費者の変化だけを見て、デジタルシフトを実現しえない」(クラシエホームプロダクツ・牧戸和至氏)といった議論もされた。
また「機能を訴求するのではなく、生活にどんな価値を提供しうるブランドなのかを伝えられないと、情報がスルーされてしまう。モノ軸ではなく、コト軸でのメッセージ開発へのシフトを進めている」(ライオン・小和田みどり氏)といった意見も出てきた。さらにオンラインのみの展開でありながら消費者を巻き込むコンテンツで、短期間にコスメやトイレタリー市場でシェアを獲得した新興企業のケースが議論されるなど、メディアプランニングのみならず、メッセージ開発においてもデジタル時代に対応した表現が求められている様子もうかがえる。
「テレビとデジタルでのリーチを統一指標で測れるような新しい尺度が必要とされている」(小和田氏)といった意見も出るなど、消費者の変化ほど社内の意識が変化していない現状が改めて見えてきた。従来のマーケティング活動の常識が変化してきていることに対する啓蒙が今後は必要となっていくだろう。
研究会の参加者。
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