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広告と販売 成功の因果関係

ロングセラーブランドに聞く!デジタル時代のテレビCMの効果と役割を考える

味の素ゼネラルフーヅ 三宮智昭×大塚製薬 上野隆信

テクノロジーは急速に進化しているものの、デジタル広告に比べれば、まだまだ売上への効果を証明・説明しにくい、テレビを中心とするマス広告。とは言え、そのリーチ力は今なお絶大で、特にマスプロダクツブランドにとっては、完全にデジタルへシフトするのは難しい決断と言わざるを得ません。コミュニケーション戦略全体において、テレビCMをどう位置付けるべきか。2つのロングセラーブランドの戦略を聞いた。

(左)味の素ゼネラルフーヅ 家庭用事業部家庭用第一部RCグループ 統轄マネージャー
三宮智昭


(右)大塚製薬 ニュートラシューティカルズ事業部 宣伝部 課長 上野隆信

新ブランド、新カテゴリーならテレビCMの売上貢献度は高い

担当業務について教えてください。

三宮▶ ブランドとしては、現在は「ブレンディ」「マキシム」「煎」といったブランドで展開しているレギュラーコーヒー全般を担当しています。その前はスティックコーヒーを主に担当していました。製品開発から広告・プロモーション企画、店頭施策に至るまで、マーケティング・コミュニケーションおよびブランドマネジメント全般を管轄しています。

上野▶ 私は現在「ポカリスエット」と「カロリーメイト」の宣伝・広告を担当しています。プロダクトマーケティングマネージャーは別におり、ブランドのコミュニケーション戦略を各媒体に落とし込む際に、内容・クリエイティブ含め我々宣伝部が関わっていきます。

ずばり、テレビCMで店頭は動くと思いますか?

三宮▶ 認知が高くないブランドであれば、CM出稿直後に大きく動くと思います。一方で、認知が100%に近いロングセラーブランドの場合は、そうした明らかな相関関係は見られないと思います。CMで言うことはお客さまにとって既知のことで、ニュース性がありませんから、それを見て「では買おう」という気持ちにはなりにくいわけです。ブレンディは、レギュラー、インスタント、スティック、ボトルとカバーするカテゴリーが広く、全体を見れば発売39年のロングセラーブランドなのですが、カテゴリーによっては育成中のことも。ブレンディブランドで新しいカテゴリーを展開するときは、それ自体がニュースになるので、CMで店頭を動かせると思います。昨年、レギュラーコーヒーの「煎」という新ブランドを出したときは、「和菓子に合うコーヒー」という特徴をニュースにしてCMを打ったことで、手応えを得られました。

店頭で商品が動いたというのもありますし、SNSでお客さまの声を見ていても、ちゃんと届いているなと感じましたね。

「和菓子に合うコーヒー」というニュース性を意識した、ブレンディの新ライン「煎」のテレビCM。

上野▶ 我々もテレビのパワーを重視していて、広告費の約半分をテレビに充てています。テレビを中心に、その周辺の施策を考える。テレビで伝えきれないことを、Webなど他の媒体で補足するという発想です。営業の現場で重視されるのは、いまだにCMの出稿量。広告について営業担当から問い合わせが多いのは、内容よりも「これ、何GRPですか?」ということですね。

三宮▶ そう、必ずGRPの話になりますよね。

上野▶ 商談の場ではWeb広告の話は出ませんね。小売りのバイヤーの方には「Web広告で店頭が動く」という意識が、まだあまりないのだと思います。店頭では、いまでも「CMでお馴染みの」というPOPが使われていたりしますから。

三宮▶ ブレンディの場合は、夏はボトル、冬はレギュラーやスティックというように、カテゴリーごとにシーズナリティがあり、その切り替えにもCMは有効に機能します。多くのお客さまに、休眠することなくシーズンインしていただくためのリテンションにも、やはりテレビが効く。限られた予算の中で、ある程度のボリュームを確保しようとすると、現時点では、デジタル広告だけでは費用対効果が低いと言わざるをえません。

CMはブランドビルディングの一貫
評価指標は「売上」にすべきではない

三宮▶ とは言え我々は、「販売実績につなげよう」「シェアを拡大しよう」という発想で広告を打っていません。と言うのも、大手メーカーの飲料ブランドは、ブレンディの何倍もの費用を投じて広告を展開していて、リーチもフリークエンシーも圧倒的に多い。短期の売上・シェアで勝負をしようとしても、絶対に勝てないんです。そういう発想ではなくて、ブランドとしての課題を解決するために、広告という手段が有効、ということなんです。僕らブランドマネージャーから広告部に対して「売上が上がる広告をつくってほしい」というオーダーをすることはなく、「認知度を上げたい」「ブランドイメージをこのように変えていきたい」といった、販売よりずっと手前にある指標をもって広告を出します。ですから、「売れなかったからダメ」という評価はしないし、逆に「売れたからOK」という評価もしません。「広告で一気に売ろう」「売上に直結しない広告はダメだ」という発想は、その企業においてマーケティングがうまく機能していないか、あるいは広告・マーケティングに対する理解度が低いか、どちらかなのではないかと思います。

上野▶ 我々も、販売実績につなげようという意識よりは、ブランドビルディングの一貫でCMが必要と考えている部分が大きいです。ポカリスエットは今年で発売36年のブランドですから、CMの目的はブランド鮮度を保つことだと考えています。今ポカリスエットは、30 ~ 40代から10代へとターゲットのシフトを進めているところです。「(競合商品と比べて)ポカリスエットは “古臭い ”」というイメージを打破するために ...

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