広告マーケティングの専門メディア

宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

デジタル時代にブランドが目指すべきは、耐久性があり、機能するデザイン

doq Japan 矢村功 氏

    デザイン・ディレクションのここがポイント!

  • ブランドデザインを、企業が100%コントロールするのは難しい時代。デザインは、耐久性があり、機能するものを生み出す必要がある。
  • クリエイティブは「魔法の杖」ではない。適切なディレクションなしに良いクリエイティブは生まれない。
  • コーポレートブランディングでは、より本質的なブランド価値の抽出と、それを運用できるよりシンプルなルールが必要。

図1 ロゴのリニューアル
多くの有名ブランドが、ロゴをフラットでボールドなデザインにアップデート。ブランドデザインを企業が100%コントロールしにくい時代、デザインには耐久性が求められる。

広告に限らず、あらゆる分野においてデザインの重要性が叫ばれるようになりました。また、この数年でSNS・スマートフォンの普及をはじめとするデジタル化の加速は、私たちを取り巻く環境を激変させました。一言で言うと、企業がブランドデザインを100%コントロールすることが難しくなったのです。このような状況において、私がデザイン・ディレクションする際に注意していることが
「(1)耐久性のあるデザイン」
「(2)機能するデザイン」
を目指すということです。

(1)耐久性のあるデザイン

コーポレートブランディングにおいて、大きな潮流の変化に気づかれている読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。この数年で、多くの有名ブランドがロゴをリニューアルしています。しかも、そこには一定のパターンがあるのです。図1をご覧いただくと、どちらのブランドのロゴも、光沢やグラデーションなどの装飾が取り除かれ、よりフラットでボールドなものにアップデートされているのが一目瞭然です。Appleであれば、ユーザーの誰かが、どこでどのようにロゴを使おうが、きちんとAppleと認識できるロゴにアップデートする必要があった。そのために金属的な光沢やスタイリッシュさを演出するデザインエレメントは排除され、よりフラットでボールドなデザインに変更されたというのが私の見方です。どのような環境下でも、ブランドをシンプルに象徴できるデザインこそが耐久性のあるデザインなのです。

このように、近年コーポレートブランディングでは、より本質的なブランド価値の抽出と、それを運用できるよりシンプルなルールが必要とされています。しかし、我々doqにご相談いただく企業の中にも「ブランド〇〇」を連発し過ぎて、混乱状態に陥っているケースが多くあります。ブランドヴィジョン、ブランドフィロソフィー、ブランドバリュー、ブランドプロミス……その言葉の定義も曖昧に、似たような言葉やセンテンスがいくつも生まれてしまうのです。結果的には、いろいろありすぎて、誰も覚えていないという状態に陥ります。ちょうど、気分のおもむくまま似たような服ばかりを買ってしまい、タンスの肥やしになっている状態です。

このような企業においては、まずは自社に存在する数々の「ブランド〇〇」を一旦整理し直す「ブランド断捨離」をお勧めしています。「耐久性のあるデザイン」は、そこからスタートします。

(2)機能するデザイン

クリエイティブを「魔法の杖」と思い込んでいる経営者や広告担当者にしばしば出くわします。有名なデザイナーやクリエイターに「お任せします!」と頼めば、センスと感性で、いきなり特別な何かが生まれると思い込んでいるのです。しかし、企業活動におけるクリエイティブやデザインといったものは、システム開発や製品開発とあまり変わりません。適切な要件定義や仕様書なしにシステムが構築できないのと同様、適切なディレクションなしに良いクリエイティブは生まれません。そもそも、良いクリエイティブとは、設定された課題を解決するものであり、明確な機能を持っていなくてはなりません。先に述べたように、企業が直接ブランドをコントロールできる領域が少なくなってきたからこそ、コントロールできる広告などでは高い精度のディレクションが求められます。それはクリエイティブブリーフを書くことから始まります。

私が広告会社時代から、アイウエアブランド「JINS」のマーケティング部時代、そして今でも使っているブリーフのフォーマットが図2です。今回はJINSで2011年に蒼井優さんを起用した「私、ジンズにかえました。」のCMを参考例に、ブリーフを書く上でのポイントをお伝えしたいと思います。

図2 クリエイティブブリーフのテンプレート
精度の高いディレクションは、クリエイティブブリーフを書くことから始まる。

【Point1】コミュニケーションの目標は何か?

「〇〇を100万個売りたい!」はビジネスの目標であって、コミュニケーションの目標ではありません。そのビジネス目標達成のために、そのCMに課せられた役割「ブランドの認知を上げること?」「商品の信頼性を上げること?」を明確にしなければなりません。このCMの場合、ビジネス上の目標はJINSの看板商品である「Airframe」というメガネの売上UPでした。しかし私はCMコミュニケーション目標を「JINSの認知率UP」としました。認知が高まり、週末ショッピングセンターに来たお客さまが「最近JINSってよく聞くよね」といって、お店にふらっと立ち寄ってもらうことをコミュニケーションの目標に設定したのです。

よってCMではAirframeを売りたいにもかかわらず、Airframeのロゴが一瞬見える以外、商品の話は一切出てきません。コミュニケーションの目標をしっかり定めたことによって、商品の良さについては、お客さまがお店に来た時にしっかりとコミュニケーションすればいい、と割り切ることができたのです。

【Point2】ターゲットとインサイトを考えよう

インサイトとは、消費者自身も自覚していないホンネのようなものです。これについては多くの書籍が出版されていますし、それを探るための、グループインタビュー、エスノグラフィなど、さまざまな調査手法が存在します。

しかし、残念ながらそのデータを分析するだけでインサイトに辿り着けることは稀です。結局、最後は担当者であるあなたが消費者になりきって、「確かに!」と思えるかどうかが非常に重要になってきます。ここではターゲットを「メガネ選びやファッションにあまり自信のない若者」とした上で、インサイトを「最近よく見る安いメガネってなんとなく、ダサくて、怪しくない?」としました。自信がないからこそ、「いいメガネは高い」「高いメガネはオシャレ」という固定観念が根深いという仮説がベースになっています。

【Point3】メッセージテイクアウェイを考えよう

「メッセージ」という言葉を聞いた途端 …

あと50%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本の記事一覧

宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する