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REPORT

首都圏の自治体担当者に聞いた「地方創生とデジタル、ブランディング」

消費者のメディア接触状況の変化に対応し、自治体のシティプロモーションの場もオフラインからデジタル、オンラインへと拡大しつつあります。特に都市部ほど、消費者のメディア接触環境は変化していると言われています。メディア環境の変化が著しい、首都圏の自治体のシティプロモーションにおいて、デジタルはどのような位置づけにあるのか。また各自治体の担当者は、デジタルメディアやツールの可能性をどんな風に捉え、日々の仕事で取り入れているのか、座談会を通じて議論をします。

横浜市では各種、コンテンツ制作に際して、市内在住のクリエイターの協力を得ている。

自治体のブランディングは内部の意識改革から始まる

―皆さんが所属する部門の役割について教えてください。

貝田▶ 横浜魅力づくり室は5年前に林文子市長主導のもと、文化観光局設立と同時に設置されました。観光客の誘客や文化芸術振興を目的とするプロモーションは、同じ局内の事業所管部署が行っています。我々はその活動の土台となる、横浜市というブランドへの信頼感や好意の醸成など、イメージの底上げを行っています。「あうたびに あたらしい Find Your YOKOHAMA」というスローガンを定め、それを広く浸透させる施策や、リーフレットやチラシといった対外的なプロモーションツールのトーン&マナーの統一など、企業のコーポレートブランディングにあたる役割を担っています。

松井▶ さいたま市のシティセールス部は平成25年度に政策局の中の課として立ち上がり、2年目に部に昇格しました。さいたま市のブランディングを担う部署です。本市は、清水勇人市長が街づくりの戦略を持ってトップセールスでフランスから招致した「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」や、「さいたま国際マラソン」、国際芸術祭「さいたまトリエンナーレ2016」、「第8回世界盆栽大会」など、さまざまなイベントを行っています。こうしたイベントをきっかけとして多くの方に本市に来ていただくことで、認知度が向上することを期待しています。シティセールス部の活動の方向性としては、横浜市さんとも似ていますが、これらイベントを一体的に活用したブランディングや全庁のシティセールス力の底上げ、インナーブランディングなどに取り組んでいます。

河尻▶ 流山市のマーケティング課は11年前に設立されました。私は8年前に民間企業から転職して今の仕事に就いています。11年前は市政に「マーケティング」という言葉を用いたのは、非常に先進的だったと思います。あえて「マーケティング」とつけているのは、市政も経営であると考えるからです。税金という財をいただいているのだから、市も企業と同じように発展し続けなければいけない。流山市は主に都心で働く人々が住む閑静な住宅都市です。まちが発展し続け、今後の少子高齢化を支えるために、それを強みと捉え、定住人口の増加を目指しました。首都圏で働くDEWKSをターゲットに、定住までのプロモーションを一貫して行っています。

松井▶ 地方創生総合戦略の先駆けですね。

河尻▶ 井崎義治市長はアメリカで働いた経験があるのですが、欧米の自治体はPRや広告を自分たちで積極的に行うのが、当たり前だったそうです。流山市にもその視点を、とマーケティング課を創設したのですが、11年前は市の職員も「マーケティングって何だ?」みたいな感じだったと聞きます。DEWKSをターゲットにすることにも「市民を選ぶのか!」という意見もあったとか。市長自ら役所内で研修を行い、意識の浸透をはかっていったことは大きかったのですが、ただ、それで即時にアクションまでつながったかというと、そうでもなくて…。イベント開催時にマーケティングの視点を入れることで、集客数が伸びた、メディアの露出が増えた、盛り上がったと、結果を見せていくことで理解が進んでいったという感じですね。何でも実務でやってみないと腑に落ちませんからね。

貝田▶ そこの状況は似ていますね。横浜市も日産自動車でマーケターとブランドマネージャーを務めた中山こずゑが文化観光局長となり、我々の意識改革のために、マーケティングについて研修をしました。言ってみれば、インナーブランディングですよね。

河尻▶ そう思います。外に理解してもらうよりも、インナーブランディングの方が手間と時間がかかりますね。

©Saitama city

さいたま市では、トップセールスでフランスから招致した「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」など、イベントも一つのブランドとして捉えた活動を実施。

街のブランディング その投資効果をどう測るか

―プロモーションへの投資効果はどのように測定していますか。

貝田▶ 効果指標づくりには悩みます。これまでは …

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