顧客分析をもとに、一人ひとりに適したコミュニケーションを実現するパーソナライゼーションは、顧客満足を高めることができる一方で、企業と消費者の関係性、親和性によっては、かえって不快感につながるケースもある。SNSの普及、コミュティ文化の浸透などにより、消費者とのコミュニケーションが活発化する中で、その温度感はどのように測ればいいのか。業種の異なる3社が語り合った。
欲しい人に、欲しい情報を欲しいタイミングで届ける
―自己紹介をかねて、現在れている仕事の領域について教えてください。
遠藤:ギャップジャパンでGapブランドのマーケティングとPRを統括しています。約20人のチームで、マスのキャンペーン、インストアのプロモーションやイベント、デジタル、オンライン、ソーシャルメディア、CRM、クリエイティブやPRの業務を担っています。
岩崎:森永製菓のデジタルコミュニケーションの部門で、HPやお菓子のコミュニティサイト、SNSなどのオウンドメディア全般を担当しています。
吉川:私が所属するお客様体験デザイン本部は、平たく言うとマーケティング全般を見る部署です。ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、社名のとおり、ゴルフ関連のあらゆる業務を行う会社で、現在はECサイト、ゴルフ場のオンライン予約、オンラインメディアと、中古ショップやレッスンスタジオといったリアル事業まで行っています。各ユニットにもマーケティング担当がいて、コンバージョンの獲得などのダイレクトマーケティングを行っています。お客様体験デザイン本部は、認知獲得やブランディングを中枢機能として担っています。
遠藤:お客様体験デザイン本部というのは、先進的な部署名ですね。
吉川:ありがとうございます(笑)。プッシュ型のコミュニケーションは現在もメールが中心です。パーミッションをとったお客さま全員に同じ文面でメルマガを送っていたのですが、徐々にその効果は薄れ、離脱率も高まっていました。
そこで、「欲しい人に、欲しい情報を、欲しいタイミングで届けよう」と、マーケティングオートメーションを導入して、この部署を立ち上げました。
遠藤:当社でも、イベントドリブンなマーケティングやキャンペーンを行っていますが、日々のメールをカスタマーの嗜好に沿ってカスタマイズするところまでは取り組めていません。GDOさんの場合、オペレーションやコンテンツ制作などは、どのようにされていますか。
吉川:核となる情報は、基本的にお得な予約情報やECサイトのセール情報です。お客さまのサイト上での行動ログに合わせて、イベントドリブンなメールシナリオを実装しています。例えば、ECサイトでカートに商品を入れたまま、注文に至っていないお客さまに対し、データトリガーでメールを配信するなどしています。シーンごとに、ゴルファーであるお客さまのインサイトを推し量りながらシナリオを設計していますが、バリエーションはこれからもっと増やしていきたいと考えています。
岩崎:そうしたシナリオは、何パターンぐらいあるんですか?
吉川:現時点では70種類ぐらいです。
岩崎:70種類ですか。それはすごいですね。
遠藤:当社では、CRMの部門がカスタマーをセグメントして、入会後1週間やお誕生日などのイベントをトリガーとしてメールを送っています。ブランドから伝えたいメッセージをどうカスタマイズして適切なタイミングで送ればよいのかという部分では、イベントのシナリオはいくらでも書けます。一方で、オペレーション面での解決は現在チャレンジしているところです。
日本最大級のゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」。
コミュニケーション手段が多様化し一律配信のメルマガ効果は低下
吉川:当社でも、セグメンテーションの切り方、その情報を欲しいと思う人を抽出する定義や基軸などは …