近年、日本でも聞かれるようになった「ダイバーシティ」。企業にとってのお客さまだけでも、また従業員だけでもなく、社会全体の多様性にいかに真正面から向き合えるか。今、企業にはその姿勢が求められています。マーケティングにも大きく影響を与える国内外のダイバーシティ対応の今、とは。
電通 電通ダイバーシティ・ラボ(DDL) 阿佐見綾香氏
2009年電通入社。戦略プランナーとして、化粧品・アパレル・食品会社を中心に数多くの企業のマーケティング戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングなどを担当。ダイバーシティに関する企業向け研修や講演、施策やアイデアなどソリューションを提供し、みんなが楽しく暮らせるダイバーシティ社会の形成を目指す。
企業がダイバーシティに注目する訳
いま、世界は多様な個性の活用や対応をスタンダードとするダイバーシティ社会へとシフトしています。トレンドは多様性に向かっており、多様性に富んでいる都市や企業が人を集めています。日本企業でダイバーシティといえば、「女性活用」に熱心に取り組んでいるケースが多く見られますが、ダイバーシティというテーマは幅広い場面や切り口で語られています。例えば「障がい」「女性」「LGBT※」「外国人」「高齢者」「子供」、さらに「企業経営」「ワークスタイル」「インバウンド」「多文化共生」「ユニバーサルデザイン」、もちろん「東京2020オリンピック・パラリンピック」のテーマでもあります。
同質性、一つの価値観・考え方に揃えたがる傾向があると言われる日本でも、経営課題としてダイバーシティ全般に向き合い始める企業が増えつつあります。同じ社会に生きる人々が多様化し、それに合わせて社会のかたちも多様化が進む中で、社員にも、お客さまにも、社会にも、より進化した向き合い方が求められる時代が到来したからです。
※LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとったセクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称のひとつ。
図表1 電通ダイバーシティ・ラボ制作の「セクシュアリティマップ」
マップ上に登場するLGBTの他にも、「身体の性別」が男女どちらか判別しにくい「インターセックス」、「心の性別」が男女どちらかに規定できない「Xジェンダー」、表現する性として異性装を行う「ドラァグクィーン」を含む「トランスベスタイト」など、さまざまなセクシュアリティが存在する。
企業がダイバーシティに向き合う意義は3つあります。
(1)人材活用:すべての人が働きやすい職場環境をつくることは …