デジタルマーケティングを実行する上で、多くの企業にとって壁となっているのが、ファンクションごとにバラバラの組織体制だ。社内外の関係部門をつなぎ、戦略全体をマネジメントできる人材が、課題解決のカギを握る。
博報堂アイ・スタジオ 統合デジタルマーケティングセンター 統合デジタルマーケティングプロデューサー 古市倫大氏
デジタルマーケティング 実行を阻む「壁」
テクノロジーの発展やデバイスの普及に伴い、生活者と企業・ブランドとの接点がデジタル領域へと広がり続けている。オンライン/オフラインのチャネル間を行ったり来たりする、多様化・複雑化した消費者行動を把握し、適切なタイミングに適切なメッセージを届け、集客や売上といった目的を達成する――そのためのデジタルマーケティングの重要性は、業種業態や規模を問わず、あらゆる企業が認識するところだ。しかし、それを実行できているか、さらには成果につなげられているかと問われれば、まだ道半ばというマーケターも少なくない。
博報堂DYグループのデジタルプロダクション、博報堂アイ・スタジオの統合デジタルマーケティングプロデューサー 古市倫大氏は、デジタルマーケティングの実行を阻害する大きな要因の一つとして、「企業内の組織体制」を挙げる。「顧客データの分析・活用、ユーザー体験の設計、システム開発、クリエイティブ、メディア……『デジタルマーケティング』と一言で言っても、それを構成する要素は多岐にわたります。デジタルマーケティングを実行しようにも、ファンクションごとに担当部門が異なり、予算やKPIを共有しにくい、連携しにくい状況にある企業は少なくありません。デジタルマーケティング全体を統括できるポジションが不在で、プロジェクトを遂行できる人材もいない、という悩みもよく聞きます」。
こうした中、同社は2015年4月、「統合デジタルマーケティングセンター」を新設。クライアント側の関係部門をつなぎ、プロダクション側の関係部門を束ねながら、企業のデジタルマーケティングの戦略立案から実行までを担う、「統合デジタルマーケティングプロデューサー」が在籍する。「生活者と企業とのコミュニケーションにおいて、デジタル領域が担う範囲が広がる中、データとコンテンツ、あるいはメディアとコンテンツなど、デジタルマーケティングを構成する要素を別々に考えることは、もはや実態に合っていません。あらゆる要素を統合的にマネジメントする『統合デジタルマーケティング』の実行が求められる中、戦略立案から施策の実行までデジタル領域全般をカバーしてきた我々が、プロジェクトマネージャーの役割を担えると考えています」。
デジタル戦略を成功に導く4つのポイント
古市氏は、前出の「統合デジタルマーケティング」を成功させるためのポイントとして、次の4つを挙げる。
(1)ビジネスゴール視点
「“バズる”動画をつくる」「CTRの上がるバナーをつくる」など、施策ありきの単発施策を実施するのではなく、集客・売上などのビジネスゴールから逆算して、コミュニケーションファネルのフェーズごとのKPIを設定、それを達成するための具体的な施策を企画・実行する。
(2)オウンドメディア中心のUX設計
リアルな顧客行動データを自社内に蓄積することができるオウンドメディアは、デジタル時代のマーケティングに不可欠な「顧客目線」のコミュニケーションを実行する上で重要なメディア。ともすると、生活者をオウンドメディアに「連れてくる」という発想になりがちだが、オウンドメディアはデジタルマーケティングの「ゴール」ではなく「中心」と捉えるべき。オウンドメディアを中心としたオンライン/オフラインにまたがるコミュニケーションをカスタマージャーニーとして描き、設計することで、顧客のリアルな行動データ取得と精度の高い仮説立てが可能となる。
(3)データドリブンマーケティング
適切なタイミングに、適切なチャネルで、適切なコンテンツをターゲットに届ける。自社保有データのほか、IDPOSデータ、位置情報データ、サードパーティーデータなどを掛け合わせて分析・活用することで、精度の高いコミュニケーションが可能になる。
(4)生活者発想のクリエイティブ企画
データを基に描いたカスタマージャーニーを踏まえ、ターゲットやタイミングに合ったメッセージを届ける必要があり、そこではクリエイティブのアイデアとテクノロジーをかけ合わせることが求められる。真に人を動かす手法・表現を生み出すためには、「生活者インサイト」を把握・理解する必要があり、それはオウンドメディアを中心に蓄積されるデータからも、読み取ることができる。
デジタルマーケティングは既存の組織・資産で実行できる
これらは、同社がデジタルマーケティングの実行支援を行う中で見出だし、実践してきたことばかり。統合デジタルマーケティングセンターの設立を機に、博報堂アイ・スタジオが考える「統合デジタルマーケティング」のポイントとして体系的にまとめた。
オウンドメディアマーケティング、データドリブンマーケティング、コンシューマーインサイト、UXデザイン、クリエイティブ……各領域を専門とするプレイヤーは数多くいるが、すべての領域を網羅し、関連部門を束ね、プロジェクト全体を遂行できる人材はそう多くない。「そこを担うことができれば、クライアント側が既存の組織体制を大きく変えることなく、また多くの企業がすでに運用しているオウンドメディアを有効活用しながら、真の成果につながるデジタルマーケティングを実行できるはずです。『その施策は、ビジネス課題をクリアするための施策になっているか?』が明確に問われる今、ブランディングと両立しつつ、戦略立案からコンバージョンまで、デジタルマーケティングの川上から川下までをトータルで手掛けてきた当社が果たせる役割は大きいと感じています」と古市氏は話した。
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