広告の世界にデジタルが浸透し、コミュニケーション設計が複雑化した時代。加えて広告とPRの融合の必要性が叫ばれ、宣伝活動において、ますますアンコントローラブルな要素が増えています。前例通りが通用しない時代だからこそ、成否を左右するのは、戦略以上に実行する人の気の力!?これからの時代に必要とされる広告会社営業担当の仕事術を考えます。
2月中旬からスタートした「マイナビ」のキャンペーン。多忙な内村光良さんを拘束できるのは10時間。その中で4本のCMとグラフィックの撮影をしなければならないハードなスケジュールで撮影は進行した。
毎年、激変する新卒就職市場
――3人はjekiの社風をどう捉えていますか。
清水:まだ若い会社なので仕事のやり方に制約が少なく、一人ひとりの力量に任せてもらえていると感じます。
山口:若い会社であるがゆえに業界の通例みたいなものにとらわれないというか…。他の広告会社では断っているような仕事もあえて引き受けてしまったりすることも(笑)。
佐藤:でも通例にとらわれずに仕事に取り組めてよかったなと思うこともありますよね。私はクライアントさんと向き合う時には頼まれごとを「断らない」ことに決めています。
山口:すごい!!
佐藤:「いやぁ、そこまではちょっと…」と断るのがスマートな対応かもしれないですが、お願いしてくださる以上、jekiに何かを期待してくださっていると思うんです。100お願いされて、そのまま100で返せるかと言ったら、難しいところもありますが、何らかの形で期待に応えたいなと思っています。
――3人は学生向け就職情報サイト「マイナビ2017」のキャンペーンで、共に仕事をしている関係だそうですね。
清水:マイナビ様とは交通広告のバイイングの仕事から取引が始まり、その後クリエイティブも含めた提案の機会をいただき、現在に至っています。学生向け就職情報サイトはどれだけ多くの学生に利用してもらえるかで明確にキャンペーンの成果が測られます。
山口:就職活動は決して楽しいことではないので、表現が難しいです。一言でいえば「嫌われずに目立つ」ことが求められるのですが、タレントさんの選定に始まり、毎回頭を悩ませています。
清水:しかも就職戦線は毎年市況が変わるので、学生のマインドも大きく変わる難しさもあります。
山口:学生を対象とした定量調査の他にグループインタビューも行って、その年の学生の感覚をつかんだうえで、それをどういう風に広告に落とし込むかを議論しながら、企画を組み立てています。
佐藤:毎年、学生の話を聞いているうちに、その年の就活生のテンションみたいなものが見えてくるようになりました。なかなか言語化できないものですが、この感覚をクライアントさんと共有できているところが、良好な関係につながっているのではないかと思います。
山口:今年は内村光良さんを起用し、学生向けの自撮りビデオレターを発信するという企画になりました。この企画を通じ、学生さんに寄り添って、横から応援してくれるマイナビのイメージをつくりたいと考えています。昨年までテレビCMは30秒、15秒の各1パターンだけでしたが、ビデオレターという企画の特性上、当社から昨年と同じ予算で15秒4本をつくりたいと提案しました。大きく風呂敷を広げたのは良いのですが、内村さんは超多忙で撮影はなかなか苦労しましたね…。
清水:撮影の日には、マイナビ様の社員の方たちにもお越しいただくのですが、社員のモチベーションを高めるためのイベントとしても、広告を活用していて、その場に参加している僕らも「一緒に頑張ろう!」という気持ちになります。
町医者のようにクライアントと向き合う
――jekiならではの強みをどんな風に捉えていますか。
山口:媒体社事業やコンテンツ事業など様々なビジネス機会があることで、広告会社としてよりチャレンジングになれるというか。余裕をもって、クライアントさんと接することができているかもしれません。プレゼンに参加をする際にも売り込むのではなく、jekiとはウマが合うと思っていただけるクライアントさんに選んでいただけたらよいという気持ちで臨んでいます。
清水:確かに一度、お付き合いが始まると長く継続いただくケースが多いですね。
佐藤:あとクライアントさんからは企業の規模感が大きすぎず、小さすぎず、「ちょうどいい」と言っていただくことが多いです。
山口:社内で営業の人たちとよく「jekiは大病院ではなく、町医者だね」という話をするんです。ややもすると、効率を重視せざるを得ない大病院は患者と関係のない事情で動いてしまうこともある。だから僕らは町医者のように患者さんと向き合い、きちんと症状を聞いて適切な処方をできる広告会社でありたいと思っています。
――jekiは1988年創業と広告業界では比較的若い会社です。若い会社であるがゆえ、社員も業界の常識や慣例に縛られすぎない。ときに頼まれごとに広告業界の通例の域を超えて、応えようとしてしまう…。クライアント側の仕事も前例通りが通用しない時代、広告会社にもスマートすぎない仕事との向き合い方が必要とされていると感じます。
【本連載について】
企業と消費者の関係が複雑化する中で、ビジネスの成果を上げるために、宣伝部も「広告」にとどまらず、商品がお客さまの手元に届くまでのすべてを設計する必要が生まれています。では、最前線でクライアントと接する営業担当が目指すべき進化の形とは、どのようなものでしょうか?前例通りが通用しない時代に不確実性の高い「アイデア」を形にし、ビジネスの成果につなげるためには、実は熱意、フットワークなど、人的なスキルの向上にADパーソンが目指すべき姿があるのではないか?編集部では、そんな仮説をもちました。社員数764名の組織だからこそ自分の仕事の領域にとらわれずに、仕事に向き合うジェイアール東日本企画「クライアントサービスプロジェクト」と一緒に、これからのADパーソンのクライアントとの向き合い方を考えていきます。
株式会社ジェイアール東日本企画 企画制作本部 クリエイティブ局第一部 担当部長/クリエイティブディレクター・コピーライター 山口 広輝氏(41歳)
1997年入社。主な仕事はJR東日本 JR SKISKI「ぜんぶ雪のせいだ。」大人の休日倶楽部「大人になったら、したいこと。」など。TCC新人賞、TCC賞、朝日・読売・毎日・日経広告賞など受賞。宣伝会議コピーライター養成講座講師。
株式会社ジェイアール東日本企画 営業本部 第四営業局第一部 部長代理 清水 圭介氏(36歳)
2002年入社。媒体局テレビ・ラジオ部に配属後、局担当、業務推進担当などを経て2007年より現職。
株式会社ジェイアール東日本企画 営業本部 第四営業局第一部 佐藤 彩香氏(31歳)
2007年入社。マスメディア局雑誌部に配属後、出版社担当などを経て2010年より現職。
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株式会社ジェイアール東日本企画 クライアントサービスプロジェクト事務局
TEL(03)5447-7974