広告マーケティングの専門メディア

           

私の広告観

ことばの持つ「成功の一般法則」を導き出したい

井上史雄

かつて方言は「訛り」と言われ田舎者の象徴だった。ところが昨今では、方言をネーミングやデザインに使った「方言みやげ」「方言グッズ」が続々と登場するなど、むしろポジティブに受け入れられている。こうした現象はなぜ起きるのか。方言研究の専門家で、東京外国語大学名誉教授の井上史雄さんに話を聞いた。

井上史雄さん(いのうえ・ふみお)
1942年山形県生まれ。1971年東京大学大学院言語学博士課程修了。東京大学文学部助手、北海道大学文学部助教授、東京外国語大学助教授を経て、1986年より東京外国語大学教授。現在東京外国語大学名誉教授。1987年第13回金田一京助博士記念賞受賞。研究テーマは現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値。著書多数。現在日経新聞で言語と経済についてコラム連載中。

ことばの価値をお金に換算する「経済言語学」

広告やブランディングにおいて「ことば」は非常に重要だ。東京外国語大学名誉教授の井上史雄さんは、半世紀以上かけて言語を研究してきた言語のスペシャリスト。専門は現代の「新方言」だ。近年は「言語の価値はお金に換算できる」と、経済の側面から言語を捉えた「経済言語学」にも言及している。最近の言語の傾向について、井上さんは次のように話す。

「最近は、地域はもちろん、都心部でも方言で書かれた看板をよく目にするようになりました。特に東日本大震災の後は、『けっぱれ!』『がんばっぺ!』などの方言がよく使われていましたね。『がんばれ!』と共通語で言うよりも、方言のほうが心を揺り動かされる、方言にはそういう社会的・心理的機能があると考える言語学者もいます。経済言語学の観点では、方言の希少価値が高まっています。テレビの影響でしょう、現在は地域の人も難なく共通語を話すようになり、方言はあまり使われなくなりつつあります。そのため逆に、方言を大事にしよう、使ってみようという流れになってきたのではないかと思います」。

井上さんは方言の調査旅行に出た際に、その土地の方言にまつわるみやげ物を収集している。最近では各地の方言みやげ・方言グッズの種類が増えており、収集が追いつかないほどだ。こうした状況の背景には …

あと74%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

私の広告観の記事一覧

私の広告観の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する