「地域の足」として使われていた鉄道を、斬新なアイデアで改革し、「観光」に活用。いすみ鉄道の存在が、外から人を呼び寄せている。


人気キャラクターを描いた「ムーミン列車」(写真上)を運行し、関連グッズも販売。アニメファンや家族連れが多く訪れるようになった。車内にテーブル席を用意したグルメ列車(写真下)も運行している。
採算の難しいローカル鉄道。その存在に未来はあるのか?ヒントとなる取り組みの一つが、千葉県の房総半島を走るローカル線「いすみ鉄道」だ。いすみ鉄道は人口の少ない山間部の鉄道であり、設立当初から経営は苦しく、何度も廃止が取り沙汰されてきた。
そんな、いすみ鉄道が、このところ急激に注目を集めるようになった。その理由は、2009年に公募で採用された鳥塚亮社長の存在にある。不採算のローカル鉄道を再生させるための斬新なアイデアを、次々と展開したのだ。
鳥塚社長が最初に行ったのが、「ムーミン列車」の運行だ。人気キャラクターであるムーミンを描いた列車を走らせ、グッズを販売。アニメファンや家族連れが、観光目的に訪れるようになった。さらに1960年代に活躍した古いディーゼル・エンジンの列車を導入。ノスタルジックな列車を喜ぶ鉄道ファンを呼び寄せた。また、その列車を改装して食事ができるようにし、車中で伊勢エビなどを食べる「グルメ列車」として活用した。こうした施策によって、「住民の足」としての鉄道に、「観光」という新たな役割を与えたのである。
過疎化が進む房総の山間部にあって ...
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