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デジタル時代の新ブランド戦略

【CES2016現地レポート】テクノロジーで生まれるメーカーのブランド体験

電通 CDC部長  事業開発ディレクター、 クリエーティブ・ディレクター 森 直樹

家電・モバイル・テクノロジー業界の恒例行事「CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)」が、今年も1月6~9日に米国ラスベガスで開催された。「新たなブランド価値を生む」という観点から、気になったテクノロジーやデバイスを、電通 CDCの森直樹氏がレポートする。

3631社が出展、世界153カ国から約17万人が参加する世界最大級のテクノロジーイベント CES。最近はスタートアップの参加も目立ち、昨年は375社の参加がありました。つまりCESは、大企業からスタートアップまで、今年1年のテクノロジートレンドを把握することができる魅力的なイベントと言えます。

CESのテーマは家電からテクノロジーへ

今年のCESは、開催に先立ち一つの分岐点と言える大きな出来事がありました。CESの主催・運営団体であるCEA(Consumer Electronics Associati on:全米家電協会)が、自らの名称をCTA(Consumer Technology Associ ation:全米民生技術協会)へと変えたのです。長らく家電(テレビや白物家電)が主役であったCESは、ここ数年はモバイルや、IoT(Internet of Thin gs:モノのインターネット)へとテーマが大きくシフトしています。

特に昨年はウェアラブル、コネクテッド・カー、スマートホームなど、あらゆるモノがネットとクラウドに接続された世界である、IoTに関する発信や展示が主役でした。さらに、3Dプリンター、ロボット、ドローンや多くのクラウドを通じたサービスなど、もはや家電やPC・携帯電話の延長線上では語れない、新しいテクノロジーの存在感が高まるにつれて、こうした変化は必然だと、私は思うわけです。

IoTがもたらす新たなブランド価値 カギは「データ」と「クラウド」

CESの主役はIoTです。改めて説明すると、IoTとは、家電、自動車、住宅、医療機器、服、眼鏡、ジェットエンジンに至るまで、あらゆるモノがネット接続された状態や、接続されたモノ自体のことを言います。CESのみならず、昨年から、家電、自動車、住宅、通信、医療、健康など、さまざまな分野を賑わせています。

IoTと言えば、私はフィリップスの「Hue(ヒュー)」というLEDライトが好きです。LEDライトがネットに接続されると、スマートフォンで色や明るさを自由にコントロールしたり、外出先から電気をオン・オフすることもできます。今や、ウェアラブル端末を通じて検出される「睡眠の質」に応じて、調光することまでできるのです。

つまり、従来ネットやデジタルとは無関係に見えたプロダクト(モノ)が、ネット接続される状態になる=IoT化することによって、新しい価値が生まれるのです。このような、ネット接続するための組み込み機器の低価格化や、通信規格の整備により、さまざまなモノのネット接続が爆発的に進行しています。

「IoT」というと、ネット接続された「モノ」そのものに注目が集まりがちです。利用者との接点であり、具体的な価値を提供するのはモノですから、重要であることに違いはありません。しかし、それと同じくらい重要なのが、接続されることで得られる「データ」と、その蓄積・活用を可能にする「クラウド」です。そこで、データの活用方法やクラウド構築については、ひとまず置いておいて、クラウド化によってもたらされるエコシステムについて、展示から解説したいと思います。

モノを通じてクラウドに集約されたデータは、有用な形に加工され、ネットを通じてPCやスマートフォンアプリなどにサービスとして提供されることになります。この「ネットを通じたサービス」がユーザーにとってどれだけ使い勝手が良く(=優れたユーザーエクスペリエンスを提供できるか)、また、どれだけの便益をもたらすか――それが、モノの価値を決定することになります。ネットサービスの設計によって、ユーザーにとってのモノの価値が決定してしまうというわけです。

冒頭で紹介した、フィリップスのHueは、非常に使い勝手の良いアプリを提供しているだけでなく、同社が提供するAPIを通じて、サードパーティーのアプリが数百存在しています。それだけ、Hueの楽しみ方があると言っても良いでしょう。LEDライトがネットサービスによって別の価値を持ち、さらに、ネットサービスのエコシステムにより、価値を高めているのです。

今年のCESでも、APIの提供や活用、APIを通じた他社サービス・機器との連携により、ユーザー体験価値を高める試みが数多く紹介されていました。さらに米国・韓国の大手企業は、ネット上のプラットフォームをAPIを通じて多くの企業にオープンに提供することで、エコシステムを構築するとともに、IoT領域で優位なポジションを取ることを狙っています。そこにAmazonやGoogleといった、ネットビジネスのエコシステムが得意なプレイヤーも参入。プラットフォーム争いでは競合でありながら …

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