月間アクティブユーザー数 4億人を超える、Facebook社の「Instagram」。11年前に8番目の社員としてFacebookに入社し、最近では主にInstagramを活用した、企業とユーザーをつなげるためのマーケティングプログラムの実施を支援してきたマット・ジェーコブソン氏に、双方向のコミュニケーションが実現する時代のブランディング戦略について考えを聞く。
Facebook マーケット開発部門責任者 Matt Jacobson
ニューズ・コーポレーション社でキャリアをスタートさせ、ニュース・アメリカ・デジタル・パブリッシングの副社長を経て、ブロードコム・インタラクティブ・グループの最高経営責任者(CEO)を務めたのち、サーフ&ライフスタイル企業 クイックシルバー社のクイックシルバー・エンターテイメントで副社長・共同設立者・マーケティングサービス部門のグローバル責任者を務め、現在に至る。FacebookとInstagramでマーケット開発部門を率い、利用者と大手グローバル企業とをつなげる戦略的なパートナーシップの構築を担う。特に、FacebookとInstagramのプラットフォームを活用した、商品のクラウドソーシングやプライシング、慈善活動など、企業の先進的でクリエイティブなマーケティングプログラムの実施を支援している。
―FacebookやInstagramのような新しいプラットフォームは、どのようにブランディングに役立つのか。
ブランディングにおける活用効果はFacebookもInstagramも同じだ。たとえば、私が過去に関わったFacebookのプラットフォームを使ったケースにJPモルガン・チェース銀行の社会貢献活動がある。同社は1億ドルのドネーションを行う際に、Facebookのユーザーを巻き込んで、そのドネーション先を選んでもらうプログラムを行った。またインテルと共同で、ユーザーにアニメのショートフィルムを投稿してもらう企画も実施した。最終的には映画館でも上映され、非常に素晴らしい作品が集まった。
両社のプログラムの根幹にあるのは、企業が自らFacebookというプラットフォーム上でストーリーを語り、そのストーリーに共感したユーザーが企業と対話したり、あるいは投稿をするなどのアクションを起こすという一連の流れだ。ここで言う「ストーリー」とは、そのブランドの社会的な位置づけや役割、価値についての、その企業自身の解釈。その解釈(ストーリー)についてユーザーが意見をし、会話に参加する中で、コミュニティがつくられていく。
そして、このコミュニティが基盤となって、新しくブランドがつくられたり、あるいはより強固なものになっていく。Instagramの場合には、そのコミュニケーションの手段がビジュアルになっているというだけで、活用の仕方に大きな違いはないと思う。
こうした活動においては、デジタルメディアが企業のマーケティング活動に大きなブレイクスルーをもたらす。双方向のコミュニケーションが成り立つからこそ実現しうる、ブランディングのあり方だと思う。
ブランドの解釈をストーリーとして語る
―デジタル時代、ブランドのつくられ方はどう変わったと思うか。
企業が一方向でメッセージを伝えることしかできなかった時代と異なり、双方向のコミュニケーションが実現する現代は、短期間でもブランドをつくれるようになったことが大きな変化だと考える。
こうした土壌が、新興ブランドのチャンスを拓いているが、一方で老舗のブランドにも素早い反応・アクションが求められるようになっている。もちろん、この変化に対応できている老舗ブランドは、これまでのブランド力をより強固なものにすることに成功している。新興のブランドのケースでは、ギリシャヨーグルトのCHOBANI(チョバーニ)が、老舗の先進事例ではメルセデス・ベンツのケースが参考になると思う。
―属性、嗜好性によるターゲティングが、SNSで広告を打つ際の一つの特徴と思うが。
ターゲティングは素晴らしい機能ではあるが ...