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デジタル時代の新ブランド戦略

一億総ネット民時代、“なぜか”愛される企業と嫌われる企業の違い

編集者/PRプランナー 中川淳一郎

ネット空間におけるコミュニケーションが、世の中に与える影響は年々大きくなっている。同じ情報を発信しても、称賛される企業と叩かれる企業があるのはなぜなのか。そんな「空気」はどのようにつくられるのか。ネット編集者の中川淳一郎氏がひも解く。

    ここがポイント

    ネットの上では「何を言うか」よりも「誰が言うか」のほうが重要

    ネット上で嫌われる理由は「上から目線」。ネットでは弱者こそ強者

    とにかく「空気」を読むこと。業務としてネットを見る時間をつくれ

ココイチは「なぜか愛される企業」の代表格的な存在

ネットには「なぜか愛される企業」「なぜか嫌われる企業」の2つが存在する。愛されるほうは、何かをしても擁護の声が殺到し、嫌われるほうは、良いことをしても偽善扱いされたりもする。それらの特徴はおいおい見ていくにしても、具体的に最近の事例から見てみよう。企業・人、両方である。

カレーチェーン、CoCo壱番屋(ココイチ)のビーフカツなどを不正転売した産業廃棄物業者「ダイコー」と、同社から商品を購入した食品卸売業「みのりフーズ」の道義的責任を問う声が多数出ている。この件について、ココイチは全面的に支持されている。それは衛生観念がしっかりしているという点を改めて認識させたことと、悪事を行っている企業を明確に非難した点にある。それに加えて重要なのが、普段からのネット上での評判である。

ココイチについては「高い」と文句を言う声はあるものの、ネットの定番企画として「ココイチで全部載せ」をやってみたという企画があるなど、かねてよりいじられキャラが定着している。これは、同チェーンのトッピングをすべてカレーに載せたものを注文するという冗談のような企画である。見栄えは良いし、金額も驚きの9000円超となるため、ネットの伝統芸となっている。

ココイチの愛され歴史は長く、古くは「1300gカレー」をいかに完食するかを競うムーブメントがあった。このカレーがなくなった時には追悼のコメントがネットに多数書き込まれた。また、ライスが残ってしまった場合に店員に言えば、ルーを足してくれることもあるという話や、福神漬けが取り放題であることなど、融通を利かせてくれるところも愛されポイントである。「高い」や「個性がない」という悪口が出たとしても「その値段で日本最大のカレーチェーンになったんだ、ボケ、文句言うんじゃねぇ」という、ぐうの音もでない擁護をする者が登場するのだ。

こうした歴史を踏まえると、ココイチは「なぜか愛される企業」の代表格とも言える。中日新聞によると、大村秀章・愛知県知事が「壱番屋は被害者だが、日本を代表するカレーチェーンで、社会的な責任は重い。なぜこんなことになったのか、壱番屋も検証し、再発防止策を講じてほしい」と定例会見で述べたという。これに対しては「なんで?」「どうして?」「意味不明」「廃棄業者に許可与えてるのは県だろwこの知事頭おかしい」「ココイチに何の責任があるんだよ?」「レイプされた女性にも責任があるといかにもこの小汚ない田舎知事は言いそう」といったコメントが書き込まれた。これは「なぜか愛される企業」であるがために発生した現象とも言えよう。

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その一方、「圧倒的に叩かれ要素しかない」存在もいる。それは …

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