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注目トレンド 2016

サイロ化した組織を打ち破る、これからのチームのつくり方

JWTジャパン 曽原 剛 × takram design engineering 田川欣哉

企業やブランドが抱える課題が複雑化し、既存の考え方や手法では、解決が難しくなっている昨今。これまでにない価値の創造があらゆる業界で求められる中で成果を出すための、“次世代型”の人材・組織の姿に迫った。

(左)JWTジャパン エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター 曽原 剛 氏
(右)takram design engineering代表 Royal College of Art客員教授 田川欣哉 氏

―これまでの経歴と、現在のお仕事について聞かせてください。

田川▶ 僕は元々エンジニアだったのですが、英国でデザインを学び、プロダクトデザイナーの山中俊治さんに5年ほど師事したのち、約10年前にクリエイティブ・イノベーション・ファーム「takram design engineering」を共同設立しました。携わるプロジェクトの分野は多岐にわたり、縦軸に「デザイン⇔エンジニアリング」、横軸に「タンジブル(実体がある)⇔インタンジブル」をとった四象限のすべてが、takramの手がける領域です。例えば、日本経済にまつわる膨大なデータを可視化した経済産業省の地域経済分析システム「RESAS」のプロトタイピング、子どもの内部被ばく量を測定する検査機器「BABYSCAN」のデザイン開発、NHKの科学番組『ミミクリーズ』のアートディレクションとキャラクターデザイン、「一冊、一室。」というコンセプトで展開する新しい書店「森岡書店 銀座店」のブランディングとアートディレクション、少しだけ未来のお菓子「一日(ひとひ)」のデザインなど。大半の仕事が「開発」を伴うもので、これを可能にするのが、「デザイン」と「エンジニアリング」の両方に精通する人材「デザインエンジニア」です。僕を含め、takramのメンバーの半数以上が、このハイブリッドタイプの人材で構成されています。

曽原▶ 僕は大学卒業後、博報堂でコピーライターとして働いたのち、2006年から2014年までの8年間、米国の広告会社 TBWA\CHIAT\DAYでAppleの広告制作に携わりました。昨年帰国し、現在はJ.Walter Tompson Japan(JWT)でクリエイティブの責任者を務めています。多くの外資系広告会社がそうであるように、JWTの報酬体系は主にフィーとなります。フィー制の良いところは、企業やブランドの課題に対して提供できるソリューションがマス広告に依らず、あらゆる手法やチャネルを使って「ブランドエクスペリエンス」をいかにつくるかを考えられることだと思っています。例えば、最近手がけた「クラフト パルメザンチーズ」(森永乳業)や「キットカット」(ネスレ日本)のプロモーションも、マス広告ではなくアクティベーションが中心の施策でした。また、B2B企業である三井化学 ヘルスケア事業部の、B2C市場進出に携わったことも印象に残っています。新しいブランドを米国でローンチしたいとの要望に対し、スタンフォード大学の研究チームやデザインファーム IDEOを巻き込んだプロダクト開発から、インナーを含めたブランディング、JWTのグローバルネットワークを生かした米国現地でのPR活動と、トータルにサポートしました。既存のエージェンシーのビジネスモデルに捉われない、こうした仕事も増えてきました。

―「組織」や「人材」に対する考えを聞かせてください。

図1 イノベーションを生むBTC型人材

田川▶ 新しい製品やサービスを生み出していくには、「ビジネス」「テクノロジー」「クリエイティブ」の3つの要素が必要だと考えています。takramは、この3つを兼ね備えた「BTC型人材」図1を育てることを一つの目標にしています。現在は、BTCの中でもT・Cの素養を持つデザインエンジニアを中核に、ビジネスの素養を備えた人材が加わったスモールチームで、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。こうした考え方に至るきっかけは、学生時代にあります。エンジニアリングを学んでいた僕は「デザイナー」と呼ばれる人たちの存在を知らず、プロダクトデザインはエンジニアがすべての工程を担っているのだと思い込んでいました。つまり …

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