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スマホブランディング THE 仕事人(PR)

デジタル空間でいかにセレンディピティを生み出すか

髙島屋 永井隆展

「前例通り」が通用しないのが、変化の激しい今の時代。特に消費者のお気に入りメディアがスマホへシフトするなど、メディア接触が大きく変化する中で、マーケターは常にチャレンジが求められる厳しい仕事になっています。そんな環境にポジティブに向きあい、挑戦を続けている新時代のマーケターの方たちに、現在の課題、そして未来構想を伺います。

プロモーションにおいて紙のツールが活用されるケースが多かった百貨店においても、デジタルの活用が進み始めている。オンラインからオフラインへの流れをつくる上でも、期待されるのがスマホ。デジタル施策に力を入れる髙島屋では、スマホにどのような役割を期待しているのだろうか。

私が所属する宣伝部プランニング室は髙島屋全店舗の宣伝政策、各店共通で実施するフェアやイベントの媒体物制作、ディレクションなどを担っています。その中で私は、ウェブ・デジタルマーケティング領域を担当しています。

これまで当社のコミュニケーション活動は折込チラシや新聞広告などのアナログのメディアが中心でした。しかし近年、特に40代以下の世代に紙のメディアでは接触できない人が増えていると言われており、そうしたお客様にもお店の情報をお届けするため、デジタルでの販促強化が重要だという社内機運が高まっています。また、髙島屋の店舗の中には場所柄、若いお客様にとって敷居の高い店舗もあります。デジタルの施策では、そうした若年層の方々とも接点をつくっていきたいと考えています。

私は常々、百貨店という業態でデジタル施策を考える際、顕在化したニーズを効率的に刈り取るような発想だけでは、百貨店の魅力は伝えられないのではないか、という思いを抱いています。店舗には様々なジャンルの豊富な商品があり、そこにトレンドなどの情報が加わり、情報発信装置となっています。目的買いのお客様もいらっしゃれば、ふらっと足を運んでいただくこともあるでしょう。そうしたときに出会う、ちょっといいモノ、珍しいモノ、驚き。いわばセレンディピティ(素敵な偶然)が生まれること。これは百貨店が連綿と提示し続けてきた魅力ではないのかと思います。それをデジタル世界でいかに再現できるか、というのが今の課題です。

一方、私たちは、あらゆるプロモーション活動で、髙島屋のブランディングという側面を意識しています。折込チラシなどの紙媒体も、常にこの考えに基づいて制作しており、デジタルでも最終的には髙島屋の世界観を伝えてブランディングにつなげることが重要と考えています。来店の際にも携帯されるスマホには大きな可能性を感じていますが、そこで考えなければならないのは、あの小さな画面の中でいかに髙島屋の世界観を演出しつつ、情報をちりばめられるか。まさに試行錯誤をしているところです。

現在、antenna*を活用していますが、antenna*では「記事」の形で情報が掲載されるという点も採用する際の判断材料の1つでした。商品陳列にとどまらず、「百貨店髙島屋」として提案したいことを、全体感をもってお伝えしていくことを目指しています。掲載コンテンツも、既存のブランドイメージの延長線上にありつつ、ちょっと変わった切り口や意外性のあるものを選定するようにしています。コンテンツを見てくれる方が、1つでも驚きや発見、セレンディピティを感じていただければと思っています。

今後は動画やVRも取り入れ、コンテンツ制作に力を入れていきたいと考えています。特に昨今、重要になってきた海外顧客とのコミュニケーションでは、日本の百貨店像が自明ではないことから、動画の活用が非常に有効だと考えています。現在、中国向けに月5本ほど、各店舗のプロモーションやイメージ動画をローカルの動画サイトに掲載する取り組みを続けています。

将来的には、私たちのサイトがバーチャル百貨店のような機能を担えるようになるのが理想です。テクノロジーは日々進化していますので、最終的には世界中どこにいてもスマホで髙島屋の世界観を楽しんでいただけるようなデジタル空間をつくっていければと考えています。

髙島屋 宣伝部 プランニング室 販売促進担当課長
永井隆展氏(ながい・たかのぶ)

2005年髙島屋入社。新宿店リビング部門に販売担当として配属。新宿店の営業企画担当(CRM・顧客政策)を経て、2013年より現職。髙島屋全社のウェブ・デジタルマーケティングを統括する。オムニチャネル、インバウンドも担当領域。

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