若年層に対するコミュニケーション手段として期待を寄せられる動画。動画の視聴習慣が根付いている以外に、若年層に動画が効果的な理由をメディア研究、心理学の観点から考える。

図表1 10代が週1回以上、接触している動画メディア
出典:サイバーエージェント 国内動画メディアの接触率調査
「10代におけるスマートフォン動画の接触率は80%でテレビと拮抗 50歳未満の半数以上がPC動画を視聴」
若年層で広がるマルチタスキング
オンラインでの若年層のコンテンツ消費において浸透しているのが動画だ。実際10代におけるスマートフォン経由のオンライン動画の接触率は80%で、テレビの接触率85%とほぼ同率という調査結果も出ている図表1。
慶應義塾大学 メディア・コミュニケーション研究所の竇(とう)雪氏は「若年層は自分で動画を制作・編集することもあり、動画と接する機会が多く、親和性の高い表現手段と言える」と話す。
加えて「情報を送る側の企業の視点に立ってみても、若年層とのコミュニケーションにおいて、動画を選択する必然性も生まれている」と竇氏。かつてのテレビの“ながら視聴”とは比較にならないほど、複数のデバイスに同時に接する現代の消費者の集中力を喚起するのは難しくなっているのだ。特に若年層は“マルチタスク”の状況下にあるケースが多いことを考えると、動画のようなわかりやすく、また興味を喚起しやすいコミュニケーション手段に流れていく傾向は、今後も続いていきそうだ。
「マルチタスクに関する研究は心理学や発達心理学の分野で以前から行われていたが、ここ2~3年で広告・マーケティングの研究でも注目され始めている。これまでの広告研究の多くが、消費者が一つのメディアに集中している状態、つまりはシングルタスクを想定して行われていたので、それでは現在のメディア接触行動にそぐわなくなりつつある」と竇氏は説明する。
米国の研究者の実証を通じ、マルチタスク状態で接する広告は理解度が落ちたという …