2013年3月の電通イージス・ネットワーク(以下DAN)発足時より、CEOを務めるジェリー・ブルマン氏。2年が経ったいま、現状の分析とこれからの展望を聞いた。
Jerry Buhlmann(ジェリー・ブルマン)
電通イージス・ネットワークCEO。1959年イギリス生まれ。30歳でBBJ(イギリスのメディアエージェンシー)を創設し、10年でイギリス3位のエージェンシーへと成長させる。1999年にイージス・グループにBBJを売却し入社。同グループ傘下のカラ・インターナショナルCEO、イージス・メディア欧州CEO、イージス・メディアCEO兼イージス・グループ取締役、イージス・グループCEOを経て、2013年3月に電通イージス・ネットワークCEO兼イージス・メディアCEOに就任し今日に至る。2014年4月からは電通執行役員も兼任。
世界の広告史上で最大の買収案件はなぜ成功したか
―DAN CEO就任からの2年を、どう振り返りますか。
広告業界の歴史において、電通によるイージス・グループの買収は最大級の案件であり、素晴らしい成功物語です。その統合プロセスが例外的にうまくいっただけでなく、ビジネスとしてのパフォーマンスを見ても、非常に力強いものになっています。この2年間で、ビジネスは競合他社の3倍近い速度で成長し、並行して50もの買収も実現しました。我々のケイパビリティはさらに強まり、成長戦略は加速しています。
そして我々はネットワークのビジョンを確立しました。「革新的な手法でブランドをつくる」がその内容ですが、社員全員がこのビジョンを理解し、日々のビジネスにおいて関与することで、大きなパフォーマンスが発揮されています。
買収・統合案件の課題として一般的に指摘されるような文化の違い―つまり、イージスと電通のビジネスの間のレガシーや文化の違い―は確かにあります。しかしそれ以上に、両社が似たような価値観を共有していたことが、統合プロセスが例外的にうまくいった理由のひとつでしょう。
―似たような価値観とは、具体的にはどういうことですか。
それは多くありますが、例えばクライアントファーストの精神、責任をまっとうする、機敏に動く、先駆的である、そして協業を好んで行う―といったことですね。それらを良しとする価値観が、電通とイージスは非常に似ていたんです。
さらに付け加えるなら、「ambitious(=熱意)」の精神です。買収前の話し合いの時点で、こうした価値観が通じ合うことに気づいたからこそ、一緒にやっていけると思ったのです。
―電通に対するイメージは、電通グループの一員になる前と後でどう変わりましたか。
電通というのは、私のみならず多くの人にとって「謎」なんです。素晴らしいという評判がある一方で、実際に理解するのは難しいというような。ですから …