ネットメディア業界がネイティブアドのステマ(ステルスマーケティング)問題で揺れている。ヤフーやハフィントンポストが、ステマ排除を明確に打ち出して配信の打ち切りや記事削除を行ったことに対し、打ち切りや削除の対象となった一部メディアがステマを否定、広告会社やPR会社、クライアントも巻き込む騒動になっている。リスクは認識されている中で、なぜ消費者を裏切るステマがなくならないのか。そこには構造的な問題が浮かび上がる。
コミュニケーションの変容
7月30日、Yahoo!ニュースのスタッフブログに衝撃的なお知らせが掲載された。ノンクレジットの記事広告を読者を裏切るステマと判断し、明らかになった場合は契約解除だけでなく、信頼回復に要した費用も請求するという厳しい対応を打ち出したのだ。ニュースメディア「CNET Japan」の取材で、ヤフーが同日付けで一部媒体の契約を解除したことも明らかになった。さらに9月1日には「ハフィントンポスト」日本版編集部が、ステマ排除に向けた「ハフポストブログ調査・管理チーム」を設立し、過去記事6本を削除したと発表した。
これらの動きは、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が3月に「ネイティブアド(ネイティブ広告)」※のガイドラインを策定したことがきっかけだ。JIAAは、消費者を保護するため、広告表記の実施、広告主体者の明示、を推奨している。
この方針に対し、一部メディアは厳しすぎると反発した。広告表記をつければ記事のクリック率が激減し収益を下げるとの主張だ。またJIAAの規定には罰則がなく実効性を疑問視する声もあった。業界最大手のヤフーの動きが注目された理由はネットメディアの構造にある。
新聞の場合は記事制作から掲載までひとつの企業で行われるが、ネットメディアは他社から記事の配信依頼を受けたり、引用したりするのが当たり前になっている。記事が制作されたメディアを離れて拡散して多くの人に届く可能性が生まれたが、ネットメディアのアクセスは、他メディアに依存しているとも言える。特に巨大なアクセス数を誇るYahoo!でトップに紹介されれば多くのアクセスが流入する。ネイティブアドもこのような拡散力に期待してつくられている。広告と明示すればYahoo!に配信することはできないが、アクセスの誘惑に負けてステマを行うメディアもあったのだ。
“記事”という社会的な信頼にタダ乗りし、読者を騙す行為は許されない。ヤフーやハフィントンポストの動きは、記事に広告が混じり込むことで読者の信頼を失いかねないメディアの「水際作戦」と言える。
※JIAAはネイティブアドを「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと⼀体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す」と定義しており、記事広告だけを指しているわけではない。
潜む「ステマ」の危険性
クライアントが広告会社やPR会社に依頼し、それを受けたメディアも合意してステマを行っている確信犯は論外だが、ネイティブアド制作のプロセスにはステマの危険性が潜む(図参照)。
メディアの編集者やライターがクライアントから依頼を受けている可能性もある。また …