テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、1年にわたって、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。
SNSはメディアであるという常識の裏側
「SNSはメディアである」という意見を識者の発言やネット上の記事で見かけることがあります。私もこの意見には大賛成なのですが、スターバックスのSNS公式アカウントやサイトを運営してきた経験から、文字面以上の意味が、その裏には隠されていると思うようになりました。そして、その隠された意味にこそ、SNSを成功に導くエッセンスが詰まっているのではないかと思うのです。
「マスメディア」「オウンドメディア」「ソーシャルメディア」―。デジタルマーケティングの世界で当たり前に使われているこれらの単語には、どれも「メディア」という言葉が含まれています。一体、「メディア」とは何なのか、紐解いてみたいと思います。
かつてマスメディアは、「司法」「立法」「行政」に次ぐ「第4の権力」と呼ばれる特別な存在でした。メディアが情報を選別することで、トレンドが生まれ、生活が豊かになり、政治や社会全体のバランスを保たれてきました。
一方、ビジネスとしてのマスメディアは、広告によって成り立ってきました。そのベースになるのが、人気番組や人気雑誌を生み出すコンテンツ開発力です。スポンサーは、自分たちのターゲット顧客に好まれるコンテンツ(番組や特集)に投資し、広告をターゲット顧客に届けることでリターンを得てきました。「視聴者・読者の利益」と「スポンサーの利益」。この両方を同時に成立させることでマスメディア自身の利益も生み出してきたのです。しかし、それは簡単なことではありません。ベテラン編集者の方々からは、「スポンサーが増えすぎると雑誌はダメになる」といった声も聞こえてきます。
スポンサーの介入が強くなり過ぎると、コンテンツの質が落ち、読者を満足させ続けることが難しくなると言うのです。視聴者・読者とスポンサーの両方を同時に満足させることは、それほどまでに高度なスキルが要求されることなのだと思います。
ソーシャルメディアのスポンサーは「上司」
「視聴者・読者」「メディア」「スポンサー」の関係は、ソーシャルメディアの世界ではどうなるのでしょうか?
メディアは、公式アカウントを運営する「あなた」自身であり、スポンサーは「上司」ということになります。あなたは、上司と消費者の両方を満足させるメディア運営ができているでしょうか?
ある企業では、ソーシャルメディアで発信する情報は、SNS担当、商品担当、営業担当の部署が集まり、合議で決められるのだそうです。マスメディアに置き換えて考えると、企画会議にスポンサーがメディアと対等な立場で参加し、番組をつくっているような状況になります。このような方法で、果たしてヒット番組は生まれるのでしょうか?
企業には、マスメディアに勤めるような自由でクリエイティブな人材はいませんし、広告をつくった経験があっても、番組や雑誌をつくった経験はありません。この経験不足こそが、多くの企業のSNSアカウントがブレイクスルーしない問題の本質なのではないでしょうか。
ソーシャルメディア活用 成功の鍵は5つのポイント
それでは、一体、どうすればよいのか…?ということで、当社のアプローチを、ひとつの事例としてご紹介します。根底にある考え方は …