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Marketing Innovation Summit

日本ロレアル×パナソニック×良品計画「顧客データの活用で拓かれるCRMの未来」

日本ロレアル×パナソニック×良品計画

顧客を「個客」として捉え、きめ細かい対応をすることで長期的な関係を築きながら、顧客満足度を向上させるCRM(Customer Relationship Management)。オムニチャネル化やビッグデータ活用推進の動きなど、CRMを取り巻く環境が変化する中、実務の最前線で活躍をしている3人に、これからのCRMについて語ってもらった。

井上千鶴 氏(左)、中村愼一 氏(中)、奥谷孝司 氏(右)

カギは、お客さまといかにしてつながり続けることができるか

──自己紹介を兼ねて、皆さんが取り組まれているお仕事の紹介をお願いします。

CLUB Panasonic TOPページ


「CLUB Panasonic」の目的は、「販売に貢献する、販売を創出する」こと。ユーザーとPanasonicをつなぐための3つの重要な活動として、
(1)主に愛用者登録者へのアンケート活用による商品力強化
(2)コミュニケーションによる継続的関係づくり(宣伝・販促活用)
(3)全社のネット経由のお客さまサービスのワンフェイス化を挙げ、“ファンを集めて・育てて・良質な顧客へ成長させる”仕組みをつくっている。

中村:私が所属するCRM推進グループは、会員制メディア「CLUB Panasonic」を運営しています。「CLUB Panasonic」では、会員の方が購入した製品を登録する愛用者登録サービスを行っており、登録された品番から特定の製品のユーザーを抽出し、アンケートを実施することで商品開発に反映するなどの取り組みもしています。「CLUB Panasonic」の総会員数は770万人で、月間アクセス数は2億2000万PVを突破しており、企業サイトとしては国内最大規模です。会員ユーザーと絶えずコミュニケーションをとり、継続的な関係づくりをしながら、そこで得られる情報を宣伝販促に活用しています。「CLUB Panasonic」をプラットフォームとして実施するキャンペーンは年間数百本になります。また、オンライン to オフラインの活動では年間で80 近くのリアルイベントに数万人を誘導し、商品を体験してもらう場を提供しています。商品体験イベントの来場者は、商品を体験してみて、近いうち購入しようと思っている人が多いので、それを「すぐ買う」という流れにしたいとも考えています。例えば、イベント当日の来場者限定で商品の購入で2000円キャッシュバックキャンペーンを実施したところ、「すぐ購入」の意志を持った来場者は83%に上りました。それまでは多くても20%ぐらいでしたから、かなり良い結果でしたね。

奥谷:私が所属するWeb事業部は、本来ネットストアを運営する部隊でしたが、現在は領域を広げてデジタルマーケティングも担当しています。デジタル上のリソースを活用して、オフラインへの送客をはじめとする施策を活性化させようと、2年前にMUJIマイルサービス「MUJI passport」を立ち上げました。現在、会員DL数は約440万人で、店頭レジでの提示率は約2割です。グローバル化も進めていまして、5月に中国でサービスがスタートし、今後は韓国や台湾、香港へと展開していく予定です。

井上:私は現在、ロレアルの中で百貨店流通をメインとするリュクスカテゴリの6ブランド(ランコム、キールズ、イヴ・サンローラン、シュウ ウエムラ、ヘレナ ルビンスタイン、クラリソニック)を担当しています。ここ2年は、公式ECサイトのマネージメントのほかに、デジタルマーケティングやCRMの統括の役割も担っています。また今年からは、音波洗顔器ブランド クラリソニック事業部の事業部長も兼務しております。CRMについては、各ブランドに、それぞれCRM担当がいて、各々のCRM戦略に基づいた活動を実施し、ロイヤリティプログラムを遂行していますので、それらをコーディネートしたり、ブランド横断でKPIを比較したり、ベストプラクティスをシェアしたり、グローバルチームやアジアパシフィックチームとの連携などといったことが主な業務です。また、各ブランドの新規顧客獲得状況や2回目以降の購入、ロイヤルカスタマーに至る導線や行程の解明などに取り組んでいます。オンラインとオフラインの両方のチャネルで購入されるお客さまはブランドとの接点も多く、ロイヤルカスタマーであるということがわかってきたので、現在はそうしたロイヤルカスタマーをいかに増やすかという観点から、O2Oのアプローチにも注力しています。オンラインもオフラインにおいても、基本的なポイントプログラムやロイヤリティプログラムの内容は同じなのですが、お客さまがどのチャネルで情報収集やお買い物をされても同じベネフィットが受けられ、一貫したブランドの世界観を体験できるような環境づくりを進めているところです。

中村:CRMの目的はあくまで増販だと捉えています。そのために、顧客をファン化してライフタイムバリューを高め、ロイヤルカスタマーになっていただくような取り組みを行っています。そうした取り組みに対する経営幹部の理解を得るために、現在はどれだけ売上につながっているかを見える化することが重要だと思っています。例えば、プライベートビエラでレンタルによる商品体験に申し込みをしてくださった会員3万人限定で購入キャンペーンを実施し、メールだけでなく郵送のDMでも告知をしました。レンタルを申し込む会員は購入の見込み客だからです。結果、かなりの割合で購入に結びつき、購入が見える化できました。特に実際に当選してレンタルをされた会員の購入率は高かったです。商品を体感してもらうことで購入に結びつくことが証明できました。

奥谷:「MUJI passport」の目的は、リアル店舗への送客を主眼に置いています。パスポート会員は平均購入単価の高いロイヤルカスタマーが多いのですが、実際にどれくらいの購入頻度かというと、年間で6~8回なんです。だからこそ、今一番注力すべきだと考えているのは、検討のフェーズです。購入時点だけでなく、検討段階や購入後の使用までの全体を通じて「顧客時間」と、私は呼んでいますが、そもそも検討をする段階で無印良品が選択肢に入っているか。それは例えば、週末に家族と買い物に行こうと思った時に、無印良品に行こうと思ってもらえるかどうかということです。そう思ってもらうには、何らかのかたちで顧客接点を持つことが重要です。これまでは週末にテレビCMを投下したり、チラシを打ったりしていましたが、現在はスマホで接点が持てるようになりました。そこでは、お客さまが能動的にアプリをタップして、無印良品の情報を見る。アプリをいつ開いて、いつ買うのかについては統計学的に分析できるのですが、その買い物データから、どういう人が何を買っているのかもわかります。アプリは毎日約15万人が開きますが、顧客時間ということを考えると、アプリを開くかどうかに関する情報が重要なんです。単なるCRMだと売上がゴールになってしまいますが …

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