文化視点のマーケティング論
□ 著者/上原 聡
□ 発行所/同友館
□ 価格/2000円(税抜)
グローバル化が進展する中、日本に固有の文化・価値観を反映したマーケティングを実践することが、日本企業の強みとなり得る。その実践方法を、先行事例と共に解説する。
地域固有の“美意識”に着目
グローバル化や、人々の価値観の多様化が加速度的に進展する現代。こうした時代におけるマーケティングでは、自社が本拠地を置く国・地域に固有の文化を改めて見直す重要性が高まっている――こうした意識の下、本書は執筆された。著者で嘉悦大学ビジネス創造研究科教授の上原聡氏は、「我々の生産・消費行為は本当にこのままで良いのかという問題意識もありました。つまり、大量生産大量消費からの脱却。ここから文化に着目する切り口が浮上しました」とも話す。
上原氏は、企業の永続性は「価値を生む商品のデザインに固有文化を反映させ、そうして開発された商品がさらに新たな生活消費文化を創造し続けること」によって担保されるとしたうえで、その実現を可能にするのは、マーケターが固有文化の重要性と、それに依存する企業の強みを理解することだと話す。「特に、固有文化として人々の内面に潜む“美意識”に着目することが、今後のマーケターには有効になると感じています」という。
マーケティングの中でも、特に心理学的なアプローチを研究の中心に据える同氏。現代および次世代のマーケティングにおいて人の感情を考慮することの意義とは何か。「例えば、包丁の切れ味の良さや掃除機の吸引力の強さといった商品の機能性さえも、使用者に快感の感情をもたらします。店舗の雰囲気がもたらすその時の気分によっても、人々の購買意欲は変化します。最低限の衣食住が満たされ、自身の欲しいモノが明確でない消費者が増えている現状を鑑みると、購買意思決定に際して、感情要因の影響力は今後より大きくなると考えます」。
上原氏は、「真の顧客志向とは相手の立場そのものになりきること」であるとし…