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食に見る、消費者の知覚の不思議

「うま味」とは何か?味の素の体感を介したコミュニケーション

味の素

料理のおいしさのカギになる「うま味」。しかし、それが実際にどんなものなのかを答えられる人は多くないだろう。ここでは、うま味調味料として長年親しまれてきた「味の素®」の、消費者コミュニケーションについて話を聞いた。

取材時には、うま味がどういったものかを体感させる簡単な方法を体験させてもらった。

ファクトとサイエンスが活動の土台

うま味調味料「味の素®」が発売されたのは1909年。もともと、東京帝国大学・池田菊苗博士が、古くから日本人が料理に使っていた昆布だしのおいしさの正体が、グルタミン酸であることを発見したことからはじまる。池田博士がグルタミン酸塩を主成分とする調味料の製造方法を発明し、特許を得る。そして二代・鈴木三郎助氏(味の素創業者)がこの特許の実施契約を結び、うま味調味料「味の素®」が世に出ることになった。

そして、戦後の高度成長期後期(1969年)に、会社とコーポレートコミュニケーションのあり方に一つの契機が訪れる。ワシントン発外電で「MSG(「味の素®」の主成分であるグルタミン酸ナトリウム)をベビーフードに使用しないように」と動物実験データを根拠に流されたのだ。当然当時の社員は、60年もの間世界で食されながら、健康・安全面の実被害は報告されていなかったので、「まさか」と思いながらも、急きょ、外部の専門家の協力も得て研究チームを立ち上げ、徹底して科学的事実の究明にあたった。結果的に1987年、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)の「乳幼児を含め、安全性上、規制値を用ける必要なし」という公式コメントによって、汚名は返上される。

「このことが、私たちの広報部の始まり、ベースになっています。以来、『ものごとをファクトとサイエンスに基づいてしっかりとコメントする』ことを活動の基本に置いています。昔は安全性に関する比重が高かったのですが、最近は“うま味”に関する情報を伝える活動が中心になっています」(広報部 学術グループ長 荻原定彦氏)。

“うま味”とは5つの基本味の一つ(他には甘味、酸味、塩味、苦味)。そして、具体的にはグルタミン酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩などの味質を総称した呼び名で、いわゆる「おいしさ」や「旨み」とは異なったサイエンス用語。例えば、グルタミン酸とイノシン酸といううま味成分を組み合わせて使うことで、うま味の相乗効果(約7~8倍)が生まれる。

同社はこれまでの活動で、「うま味について言葉で説明しても消費者に理解してもらうのは難しい」と実感してきた。そこで「うま味」「おいしさ」を伝える最もストレートな手法として“体感”してもらうことに注力している。

今回、その基本的な手法を、取材者も体感させてもらった。

「うま味」と「おいしさ」は別もの

「AJINOMOTO® Umami Science Square」
シアターや「味の素®」製品紹介コーナーに加え、うま味を体験するホールなども用意されている。体験コースで特に人気なのが「味の素®瓶封入体験」。

まず目の前に用意されたのがグミ。言われるままに手で鼻をつまみながらグミを口の中に入れて味わう。何の味なのか舌で感じてから、手をはずす。瞬間、急にグミのフルーツ味と香りが広がった。舌だけで感じていた味とは全然違うように感じる。「おいしさは、舌だけで味わう味だけではないということを体感してもらえる簡単な方法です。味覚と嗅覚(さらに視覚や聴覚など)が混ざることにより、その情報が脳で統合されて、おいしさとなります」。

次に口を水でゆすいだあと …

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「うま味」とは何か?味の素の体感を介したコミュニケーション(この記事です)

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