「前例通り」が通用しないのが、変化の激しい今の時代。特に消費者のお気に入りメディアがスマホへシフトするなど、メディア接触が大きく変化する中で、マーケターは常にチャレンジが求められる厳しい仕事になっています。そんな環境にポジティブに向きあい、挑戦を続けている新時代のマーケターの方たちに、現在の課題、そして未来構想を伺います。
紙とWebの編集部を融合する改編を行ったハースト婦人画報社。オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ「360°戦略」を標榜し、さらなる進化を遂げようとする同社にとって、スマートフォンはどのような位置づけにあるのだろうか。
「出版社ならではの動画コンテンツに挑戦したい。」
ハースト婦人画報社の広告本部は、雑誌やWebなど、当社の全メディアの広告スペースのセールスを担当しています。以前は紙メディアが中心だった広告営業も近年は、デジタルメディアのセールスが増えています。
当社では2008年より、紙、Web、Eコマース、SNS、イベントなど、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ「360°戦略」を掲げており、あらゆる読者との接点をつないでいく発想が広告本部にも求められています。
雑誌の『ELLE JAPON』、『ELLE girl』、そしてWebの『ELLE ONLINE』を担当するビジネス部は、今年3月にプリントとデジタルのセールスチームが融合。4月には編集部もプリントとデジタルが統合されて「エル コンテンツ部」とする組織改編が行われたばかりです。
クライアント企業のデジタルに対する意識も、昨年あたりから劇的に変わってきたという印象を持っています。特にラグジュアリーブランドのクライアントは、Webには慎重な態度をとるケースが多かったのですが、本国から日本のデジタル市場やソーシャルメディアの環境について説明を求められるようになったと聞いています。
デジタル戦略の中でも、特に重視されているのがスマートフォン。「360°戦略」を考える上でも、常に手元にあるスマートフォンの活用は不可欠です。
一方で、クライアント企業からは『ELLE』ならではのクオリティを担保した記事広告でありながら、より広く発信・拡散をさせたいという要望をいただいていたこともあり、キュレーションメディアとの連携を考えていました。
ただし『ELLE』は、自分たちの表現したい世界観をとても大切にしているメディアなので、どのキュレ―ションメディアと組むかは慎重に検討を重ねてきました。結果、Antenna(アンテナ)とコラボレーションし、通常の編集記事はもちろん、タイアップ記事の拡散を目的とした広告の両面で、連携を始めています。
紙もWebも『ELLE』がつくるコンテンツにはクオリティに対する強いこだわりがあります。その点、Antennaは抜群にビジュアルが美しく、我々の世界観を表現できる場所だと考えています。加えて20代から40代のトレンドに敏感な感度の高い女性が多いため、『ELLE ONLINE』と親和性が高い。Antennaと組めば『ELLE ONLINE』の読者以外にもリーチが拡がると考えました。
配信を始めてから、編集部からは「記事の表示回数やクリップされた数など、反響が即座にわかるので、コンテンツづくりに活用できる」という声があがっています。
またクライアントからは、コンテンツのクオリティを担保しつつ、タイアップページに優良なオーディエンスを集められたと、高評価をいただいています。こうした『ELLE ONLINE』の取り組みを見て、当社の他のメディアにもAntennaとコラボする動きがでてきています。
Antennaとの連携で今後、特に期待したいのが動画の活用で、『ELLE』でも動画を使った新しい挑戦を始める予定です。Antennaはつくり手の世界観を損なわず、ユーザーに自然に動画を届けられるような表現方法に力を入れていますので、一緒にさまざまなチャレンジをしていければと思っています。
ハースト婦人画報社 広告本部 本部長 斉賀 明宏氏(さいが・あきひろ)1997年ハースト婦人画報社の前身となる、アシェット・フィリパッキ・ジャパン入社。主に『ELLE JAPON』の広告営業、マーケティング部門に携わり、2011年より現職。ハースト婦人画報社の持つ雑誌、Webの広告営業全体を統括。 |