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「おいしいものは、脂肪と糖でできている。」のコピーから読む「欲望」のこと

コピーライター/関西大学社会学部教授 山本高史

広告を読めば、なんかいろいろ見えてくる。例えば「欲望」のこと。

日本コカ・コーラ(2014年~)コピーライター 藤本宗将

江戸時代の男性の平均身長は、260年余を通しておよそ155~157㎝、女性は143~145㎝、身分による違いや地域格差の可能性はあるものの、当時の文献、衣装の寸法、根拠となる人骨サンプル数の多さからも、推定の精度は確保されている(ちなみに徳川吉宗さんは155.5㎝という通説がある)。体重に関しては上記ほどの推定の材料は持たないが、現代的な肥満の要件が満たされるとはとても考えにくい。彼らは一汁一菜程度のもので食事を済ました。粗食である。暴飲暴食など家計も社会も許さない。1977年の「マクガバン・レポート(アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書)」は食事と健康・慢性疾患との関係を考える上で、日本的な食生活を礼賛している。中でももっとも理想的な食事と定義したのは、玄米を主食とする元禄以前の食生活だった。それを肥満や成人病の対角に位置づけている。粗食に加えて運動である。電車もバスも、自転車すらない。駕籠はあったが庶民が日用使いできるようなものではない。亭主は近からぬ勤め先に徒歩で通い、勤務先での労働も機械の力を借りない、おそらくは消費エネルギーの大きいものだった。女房は、何ごとも歩いて用を足し、炊事洗濯掃除家事一通りを人力でこなした。常識的には、太りようがない。江戸時代ですらそうだとすると、それ以前の状況も想像に難くない。食品の安定供給が実現されていない時代では、食に関する不安とは、肥満ではなく、飢餓である。食の論点は美容でもなく、健康ですらなく、生命である。その世界では「ダイエット」など想像もつかない。

ダイエットは今回の原稿のキーワードである。もともとの意味は「規定食」、つまり健康や美容の改善・保持のために食事を制限することである。ぼくらの用いるダイエットという言葉の意味はそれに遠からずも当たらず、目的を減量・痩身に絞り、運動やサプリメント、マッサージなども含め食事には限らない。本稿では後者の意味合いで用いる。

アメリカにおいてダイエットという概念が現れたのは19世紀半ば以降のことだが、日本ではそれよりおよそ1世紀遅れた1960年代のことと言われている。1967年、イギリスの女優でありモデル・歌手のツイッギー来日によって喚起された華奢な身体への憧れ、そしてそれに続くミニスカートブームなどに起源を求めている。それ以前に1953年の伊藤絹子のミス・ユニバース入賞を機に、体型に関する認識が変化したという言説もある。その変化を数字的に裏づける興味深いデータがある。厚生労働省が行なっている「国民健康・栄養調査」である。BMI(Body Mass Index)指数とは体重(㎏)を身長(m)の2乗で割ったもので、日本肥満学会はBMI値22を標準としている。

日本人の体格の変化(BMIの推移)(1947~2013年) 
※BMIは体格指数で体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもの。25以上は「肥満」、18.5以下は「やせ」とされる。ここでは平均体重と平均身長から算出。1987年までの20~29歳は20~25歳の各歳データ及び26~29歳データによる平均値から計算。資料)国民健康・栄養調査(厚生労働省、1974年調査なし)、学校保健統計(文部科学省、17歳)

上に1947年から2013年までの値の変化を示す図を掲げたが …

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