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生活者に「選ばれる」企業をつくる デジタルマーケティング対談

キヤノンマーケティングジャパン×アイ・エム・ジェイ「顧客を知るための投資」

キヤノンマーケティングジャパン×アイ・エム・ジェイ

「徹底した顧客理解とマーケティングのPDCAサイクルの構築を進めることがデジタル部門の役割」として、社内の各部署と連携して取り組むキヤノンマーケティングジャパン。同社のデジタルマーケティングセンター所長の平林泰直氏とアイ・エム・ジェイ(IMJ)取締役COOの加藤圭介氏に聞いた。

マーケティングの原点は顧客を理解することから

加藤▶ 様々なマーケティングチャネルがある中で、デジタルをどう位置づけていますか。

平林▶ 顧客接点にはデジタルもあればアナログもあり、どれが有効かはお客様が決めることです。デジタルマーケティングだからといって、アナログを考慮しないようなスタンスでは顧客のインサイトを見失ってしまいます。両者は連携させてこそ効果を発揮するもので、そのためには顧客視点のカスタマージャーニーを描くことが重要です。

加藤▶ カスタマージャーニーを考える上で大切なことは何でしょうか。

平林▶ 私たちは顧客の理解についてもっと貪欲になる必要があります。お客様が製品を購入された本当の理由をとことん突き詰めていく。それでこそ適切なお客様に、最適なタイミングで、適正なサービスやバリューを提供することができ、期待する成果を導き出すことが可能になるはずです。

そのために鍵となるのはデータの活用です。具体的には、キヤノン製品のユーザーと非ユーザーの双方のデータがあるのが望ましい。他社ユーザーのデータは得られないので、サードパーティー(第三者)データなどをうまく組み合わせていくことが必要です。

加藤▶ キヤノングループはBtoBとBtoC双方でビジネスしています。それぞれプロセスや必要なテクノロジーが異なると思いますが、いかがですか。

平林▶ BtoCでは広告の費用対効果を視覚化して最適な投資配分を重視します。また、店頭でいかに指名買いしてもらうかがポイントです。キヤノンを選んで良かったと感じていただくために、SNSなども使って普段からお客様とのコミュニケーションを取っておくことも重要でしょう。BtoBの場合は、これまでのような一本釣りの営業スタイルではなく、高い購買意欲を持った見込み客を多くの顧客接点から見つけ出し、購買意欲の高いお客様を営業に引き渡すことを意識しています。

加藤▶ デジタルマーケティングの予算を確保する上で課題はありますか。

平林▶ 当社の中で、我々は事業部門の予算を預かって動かす立場なので、「デジタルだから(試しに)やってみよう」だけでは通じません。「デジタル施策により、今までわからなかったニーズを可視化し、効率化を図ります」というように、収益につなげるためのアイデアとして提案しています。

事業部門の担当者もデジタル化の波は肌感覚で分かっていますから、低予算でのトライアルから始め、効果を見ながら続けるようにしています。最初から大がかりなソリューションは導入できませんが、手間と時間はかかるもののコストはさほどかかりません。効果が出てくれば、その後の話も進みやすいし再投資も可能です。

加藤▶ 理想の姿や大きなビジョンを見せることは大切ですが、社内の理解や協力を得るには、早期に「小さな成功」を積み、共有することで予算もつきやすくなることが多いと思います。

平林▶ 米国企業などはマーケティングのKPIを明確にし、PDCAを回す考え方が根付いていますが、日本企業の場合は、そこが曖昧です。それを作るところから始めるのは大変なので、「このツールを導入することで、KPIを明確にし、PDCAを回していきましょう」と、逆説的な言い方をすることもありなのかなとこの頃感じています。

米国のマーケターは売上・利益が出るかどうかが関心事で、そのために最適な手法を選ぶというシンプルな考え方です。見習うべき点は多いと思います。

信頼されている企業はデータ時代にも勝ち残る

平林▶ 来年1月からマイナンバー制度が施行されます。今後は企業が個人情報をどう運用するかがますます問われてくるでしょう。

加藤▶ 生活者は自分にとって信頼できるブランドにのみデータを預けます。つまり、信頼されるようなブランドはそれらのデータを活用し顧客理解が進み、ますます個人に合った対応が可能になり、さらにブランド価値が上がっていく。一方、逆もまた然り。そんなスパイラルが続くことで、企業間の競争優位性に大きな差ができるでしょう。

平林▶ 信頼関係を築けるかどうかは重要です。ソーシャルメディアでも、どのタイミングでどのような情報を出すか、ユーザーとの距離感には気を遣います。広告から自社サイトに誘導して会員になってもらい、あとはSNSでそれぞれの属性のお客様としっかりとコミュニケーションをとっていく。今はそのスキルセットをつくろうとしています。広告の打ち方やオムニチャネルと関連付ける方法など、ターゲットごとの施策を網羅したいですね。

加藤▶ 企業ではスキルを身につけた人がジョブローテーションで異なる部署に異動になり、新しい担当者はデジタルスキルをゼロからつけねばならないケースもあります。そこに対して何か対応されていますか。

平林▶ スキルの蓄積は本当に難しい問題です。右脳の感性と左脳のロジックを持った人材が理想なのですが、そのようなスーパーな人はなかなかいないですよね。クリエイティブやITベンダーなど外部とのネットワークを活用して、場合によっては社内に入ってもらったり当社の人間を派遣したりという関係性もあると考えられます。

加藤▶ いまやデジタルは経営戦略や事業戦略と一体化しています。つまり、我々もこれまで以上にクライアントの事業や業務を理解した上でデジタルを語らねば、本当の意味でビジネスに貢献することは難しくなってきています。そのため、客先に常駐または半常駐する「オンサイト型」で一緒に同じ時間を過ごし、会議に参加させてもらい、同じ言語で語れるようになることを意識しています。それができて初めて我々の持つデジタル領域のノウハウが活かせると考えています。

平林▶ ツールを導入すれば競争に勝てるわけではありません。それをどう回していくかで競争力に差が出ます。デジタルマーケティングを社内で運用する場合、経営・事業戦略、コミュニケーション戦略・ITなど、いくつもの切り口や課題があり複雑化しています。企業の健全な成長のためにそれぞれに対して答えを出すには、複数の外部パートナーが参加してチームを組んでやっていくことも必要だと思います。

加藤▶ そのメリットは、お手伝いする立場の我々もよくわかっています。最近ではそれぞれに強みを持つパートナーを集め「ベスト・イン・クラス」の発想でプロジェクトを組む企業も増えました。今後はそういうスタイルが主流になっていく可能性が高いのではないでしょうか。

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