2014年11月6日、セールスフォース・ドットコムと宣伝会議は「JAPAN CMO CLUB」を設立した(CMO:Chief Marketing Officer)。日本のマーケターを支援し、その活動や成果、社会的役割を国内外に発信することを目的とした組織で、会員社同士が交流する「研究会」の場を年6回程度開催していく予定。本コーナーでは研究会の様子をレポートする。

写真左から、すかいらーく マーケティング本部 インサイト戦略グループディレクターの神谷勇樹氏、コーセー 執行役員 宣伝部長の北川一也氏、「JAPAN CMO CLUB」CMOの加藤希尊氏、ファイザー イノベーティブ医薬品 マーケティング統括部長の宮原京子氏、三越伊勢丹ホールディングス 経営戦略部 市場開発部 執行役員の久保田佳也氏。
交差するカスタマージャーニー
2014年12月11日、「JAPAN CMO CLUB」の3回目となる研究会が開催された。今回のディスカッションのテーマは「長期的な関係づくりのためのカスタマージャーニーを考える」。コーセー、すかいらーく、ファイザー、三越伊勢丹ホールディングスの4社よりトップマーケターが参加した。ディスカッションは「JAPAN CMO CLUB」のCMO(Chief Marketing Organizer)である、加藤希尊(かとう・みこと)氏のモデレートで進んだ。
冒頭で加藤氏より「カスタマージャーニーの理解が重要になっているが、ブランドとお客様の間の接点は多岐にわたり、把握しづらい状況がある。しかしカスタマージャーニーは“瞬間”とも言える顧客接点の連続により形づくられているもの。まずは接点において、重要と思える“瞬間”から考えていくと、カスタマージャーニーも理解しやすくなるはず。これまでのディスカッションでも、各社が考える重要な顧客接点の瞬間には、事業ドメインと密接するブランドのコアがあった」と解説。加藤氏の話を踏まえ、各参加者が考える「お客様とブランドの接点で一番、重要な瞬間は?」という質問から始まった。各参加者の発表内容は以下の通り。
●三越伊勢丹ホールディングス・久保田氏
小売業にとって重要な瞬間は、何と言っても「接客」。単に言葉通りの「接点」という意味だけではなく、(1)お客様に価値を伝える重要な役割を担い、(2)お客様のニーズとウォンツを探りだす大切な機会であり、(3)日本ならではの“おもてなし”としての心の満足を伝える場であり、(4)五感で価値を高めて感じていただく機会(リアル・WEB)だと捉えている。
●コーセー・北川氏
店舗を介しての販売が基本となる以上、販売時点、つまり「店頭」が最重要になる。そこでマーケティング施策も、店頭体験での効果をイメージし、プロモーション全体を「逆算」のイメージで個々のプロモーションをまとめていくアプローチをとっている。
●ファイザー・宮原氏
戦略的にレバレッジが効くと判断される、市場としてポテンシャルの高い接点が重要。製薬事業の場合、カスタマージャーニーではなく「PatientFlow」として、Journeyを表現するが、潜在的な(疫学上)患者数から始まり、その患者が通院するとしても、どんな医療機関にかかる、診断される、処方薬が選択される、継続する、ドロップする…などの接点を丹念に見ている。
●すかいらーく・神谷氏
全国に店舗の従業員が約9万人いるので、当然お客様にサービスを提供する瞬間が重要である。ただ食事の機会は毎日3食、365日あり、かつ当社の場合、「ガスト」で言えばブランド認知率が8割以上という状況なので、一般消費財のような、きれいなファネルは描けないという認識がある。しかもお客様が多様化し、一人ひとりに刺さるメッセージが違う時代には、店舗外の個別接点となる、モバイルを重視している。
加藤氏は「お客様との長期的な関係をつくる上では、カスタマージャーニーを理解することが大切という認識に共通点があった。今回は、その接点の中でも特に重要な“瞬間”に焦点を当て、ディスカッションを進めてきたが、当然ながら、お客様は日常の中で他社の商品・サービスとも多くの接点を持っている。ディスカッションを通じ、異なる商材のカスタマージャーニーについて互いに理解を深めることができたのではないか」と議論を総括。マーケター同士のディスカッションを通じ、ブランド間コラボの可能性も見えてくる研究会となった。

「JAPAN CMO CLUB」の活動報告は、随時、宣伝会議運営のWeb メディア「アドタイ」にてレポート中です。
http://www.advertimes.com/special/cmoclub/