「前例通り」が通用しないのが、変化の激しい今の時代。特に消費者のお気に入りメディアがスマホへシフトするなど、メディア接触が大きく変化する中で、マーケターは常にチャレンジが求められる厳しい仕事になっています。そんな環境にポジティブに向きあい、挑戦を続けている新時代のマーケターの方たちに、現在の課題、そして未来構想を伺います。
現在、世界での販売台数は50万台を超え、国内でも順調に販売数を伸ばしてきた「レクサス」。次のステージとして、新しいターゲットとの接点づくりが課題となっている。そんな「レクサス」のブランディング活動にとって、スマホはどのような活用の可能性があるのか。
レクサスのメインターゲットは、情報感度の高い方々です。「国産車は絶対壊れない」という価値観で車を選ぶ方ではないので、従来からのコミュニケーションでは響きません。だからと言ってマス広告が不要なわけではないですが、斬新なメディアミックスが重要で、従来の広告活動に比べると、デジタル活用比率も高いのが特徴です。
自動車の購入検討過程では、WEBでの情報収集が外せないものになっていて、WEBは当社にとって「拡張版のショールーム」のような位置づけで考えています。現在、カタログ請求はスマホよりPC経由からの割合が高く、また閲覧数もスマホはWEB全体の2割~3割程度ですが、傾向として増加傾向にあるのは間違いありません。メディアミックスの中でも、いつでもどこでも見ることができるスマホは重要視しています。
ただ、レクサスは単なる移動手段としての機能だけではない価値を提供するブランドなので、スマホの小さい画面の中で、いかに世界観を表現し、エモーショナルに訴えるクリエイティブにするか、これから研究していきたいと思っています。
例えば、動画一つとっても、テレビCMの場合には映像のクオリティに非常にこだわります。これがスマホになると、過度に映像の質にこだわる必要はなく皆が見て楽しく、興味を持ってくれるようなコンテンツを作り、発信する方が、効果があるのかもしれません。
レクサスの場合は、背後にあるコンテキストも伝えたいブランドなので、スマホでもビジュアルで見せたい部分が多いです。現在よりも通信環境が改善され、より安定してコンテンツを楽しめるような状況になれば、スマホは顧客接点として非常に利便性が高いと思うので、これまでにない挑戦ができる、“遊べる”要素が多くあるのではないかと思います。
私は宣伝部門のキャリアが長いのですが、メディア環境は大きく変わったなと思います。これまでは広く生活者にリーチするために使えるメディアはマス広告に限定されており、しかもその広告の枠の量は決まっていたので、限られたパイの中で、いかにマインドシェアを取れるか、を考えればよかった。しかしインターネットが登場したことで、このパイが無限に拡大しています。無限に広がっていくメディア環境の中で、いかにレクサスとの接点を持っていただき、興味を抱いていただけるか。これが私たちのデジタルメディア活用における本質的な課題意識です。
課題解決の一つの方向が、コンテンツ・マーケティングだと思っています。“広告然”とした顔で、生活者に近づいていくと、無数の情報の中で埋もれて、スルーされてしまいかねません。Antenna(アンテナ)もそうですが、コンテンツとして自然に入ってくるネイティブアドを通じ、ブランドとしてのお客様へ接するコミュニケーションの姿勢までも表現できればと思っています。
特に口コミの影響力が企業の発信よりも大きくなってきているような時代においては、ユーザーに支持され、選ばれた記事が集まるキュレーションメディアの中で、自然とレクサスの感性に触れていただける機会はまさに理想的です。
そうそう、うちのメンバーは全員、Antennaのアプリを入れて使っていますよ。
今月の仕事人
トヨタ自動車 Lexus International レクサスブランドマネジメント部 部長 高田敦史氏(たかだ・あつし)1985年トヨタ自動車入社。宣伝部を経て、商品企画部で生活者分析、新コンセプト車の企画に携わる。タイ、シンガポールにて5年間の海外駐在。その後、トヨタマーケティングジャパンで再び宣伝業務を担当し、2012年6月よりレクサスブランドマネジメント部部長として、レクサスのグローバルブランディングを統括する。 |