企業のオウンドメディアは、消費者の購買行動にどれほどの影響を持っているのか。アドビ システムズが行った最新の調査結果から、企業のマーケティング施策の過程における、Webエクスペリエンスの効果が見えてきた。
取捨選択する消費者とデジタルメディアの効果
消費者の購買行動に、多様なデジタルメディアが様々な影響を及ぼす現代は、「デジタルエクスペリエンスの時代」と言えるでしょう。デジタルメディアの大局は、総務省から毎年発表されている「通信利用動向調査」の動向を追うと、実感としてつかむことができます。2014年6月の調査結果によれば、13~59歳のインターネット利用率は9割を超え、高齢者も拡大傾向にあります。あるいは「家庭外でのインターネット利用」に占めるスマートフォンの割合を見ると、前年比15ポイント増の43.4%と、生活シーンの様々な場面でデジタルメディアと接触している様子が伺えます。
インターネットは、ニュースサイトやポータルサイトのように受動的な情報接触メディアとしてだけでなく、消費者が自ら情報を取りに行く、能動的な情報接触メディアの側面も兼ね備えています。またソーシャルメディアも、消費者に深く影響を与えています。
かつて企業が新商品や新サービスを広く消費者に認知させるうえで、圧倒的なリーチと訴求力を発揮していたのはマスメディアでした。受動的な多くの視聴者へ一斉に情報を配信できるテレビの強みは、失われることはないでしょう。しかし、価値観やライフスタイルが多様化し、能動的な情報収集手段を持ち、自らの判断で情報を取捨選択できる現代の消費者の環境を考えれば、デジタルメディアが消費者の購買行動に及ぼす影響も、大きくなっています。そのデジタルメディアの効果、特に、企業がコントロールできる「オウンドメディア」、端的にはブランドサイトやキャンペーンサイトは消費者の購買行動に、どの程度の影響を及ぼしているのでしょうか。
消費者1000人に聞いた購買行動とWebの関係
そこで、デジタルメディアの代表格と言えるWebと消費者の購買行動の関係を、実際に調査してみました。これからご紹介するのは、筆者の所属するアドビ システムズが、日経BPコンサルティングに委託し、2014年10月に全国の消費者1000人を対象として実施した調査結果の一部です。
消費者が商品やサービスを認知し、購買に至るまでのプロセスとして、1920年頃に提唱された「AIDMAの法則」という有名な古典的モデルがあります。そこから時代を経て、2000年前後のインターネット普及期などにも様々な法則が提唱されてきました。その底流にあるのは、消費者の行動は直線的な単純なモデルでは表せない、という事実でしょう。ただこの消費者行動の非線形性は、調査によって定量化しようとする試みにとっては大きな課題となります。そこでカスタマージャーニーを単純化し、回答者が自分の行動を振り返りやすいという観点で、認知から検討、検討から購買という行動変化の部分に着目して調査を実施しました。また特に、身近な情報源となったWebと消費者の関係に着目しました。これによって、様々な企業のマーケティング施策の過程における、Webエクスペリエンスの効果を明らかにすることができました。
知るきっかけ 5年前と今の変化
いつの時代も企業と消費者との関係は「認知」から始まります。商品やサービスを消費者が知るきっかけは …