今年の春から始まる新しい「食品機能性表示制度」により、健康機能性の根拠を示す複数の科学的根拠の届け出をもって、その飲食料品の機能性表示が可能となる。健康・美容ビジネスへの注目の高まりの背景、またそこでのマーケティング・コミュニケーション活動のポイントとは。
食品機能性表示制度とは?
2015年春からスタートする新しい機能性表示制度。従来の特定保健用食品(トクホ)のように、臨床試験を伴う許認可制でなく、成分・素材・食材が持つ健康機能性の根拠を示す複数の科学的根拠の届け出をもって、その飲食料品の機能性(体への効能)表示が可能となる。消費者庁の監督のもとに実施。加工品だけでなく、野菜、果物、魚介類といった生鮮品も、その対象に含まれる。

ヘルスケア関連消費財の場合はBtoBtoCコミュニケーションを主流に、この上流域ではBtoBコミュニケーション、下流域ではBtoCコミュニケーション、さらに一般消費財同様のBtoC(=DTC:Direct To Consumer)コミュニケーションの計4つのルートが存在する。
2015年の市場規模は66.4兆円
ヘルスケアという言葉から多くの人が連想するのは、おそらく薬臭い「医療」の世界ではないだろうか。しかし、ヘルスケアの本来の意味とは、英語のMEDICAL CARE(医療)、HEALTH(予防)、WELLNESS(健康)、BEAUTY(美容)まで、非常に広範囲にわたる。
経済産業省は2015年のヘルスケア(健康・医療・福祉関連サービス)の市場規模は66.4兆円に達すると推計しており、産業界において最も伸長する業種の一つとして期待され、多くの企業や自治体が事業化を推進している。
ヘルスケアビジネスは、世の中の健康課題を解決するか改善するかして「社会的価値」を生み、その社会的価値がさらなる企業活動の商機にもなるCSV(Creating Shared Value、共有価値の創発)という考え方と親和性が高く、これからますます企業経営、自治体経営の要として注目度を増すことだろう。
もはやヘルスケアビジネスは、規模を誇る大企業や指導的立場にある国だけのものではない。地方の中小企業も自治体も、商店街の食堂や自宅をオフィスにする個人事業主も、ヘルスケアビジネスを始めることができる時代なのだ。
ヘルスケア市場におけるマーケティング戦略の特異性
人は健康行動をとる時、その行動の一つひとつを天秤にかけて、面倒だの、時間がないだの、お金がかかるだの、遠いだの、雨が降っているだの、汗をかくのがイヤだの、明日からにするだの…と、つべこべごたくを並べて、“拒否る”理由を探してしまうものだ。
健康行動は「誰のために?」「何のために?」という《目的化》が難しいため、ついつい損得勘定が働いてしまう。「私が今、まさに取ろうとしているこの行動は、インセンティブ(利益ないし純便益)だろうか、ディスインセンティブ(不利益ないし負担)だろうか」。
おおよそ、人は健康の価値に気づいていない。つまり、健康とは《不確実な利益》なのである。こう考えることによって、ヘルスケアビジネスのゴールがはっきりと見えてくる。つまりは、「ヘルスケアビジネスは、(商品やサービスの提供をもって)健康利益の“確実性”を向上させるためのものである」ということだ。
ヘルスケアビジネスに求められるマーケティング戦略について、特にブランディングで注意すべきは、知覚品質(機能的ブランド)を成すエビデンスやデータを重視し、それを最大級の《正しいもの》として伝えることに専念するあまり、消費者によって《いいもの》として再生される副次的産物に対する注力が弱くなる、ないしは皆無状況となり、感覚品質(情緒的ブランド)のつくり込みが軽視されることだ。
よって、知覚品質・優位、感覚品質・劣位のアンバランスを招き、ブランドの「物語」化を難しくしているヘルスケア商材が少なくない。
正しいものをいいものに自動変換する仕組み
健康利益の確実性を向上させるためには …