2013年、国内の飲料事業を一体化したキリン株式会社の設立にあたり、経営戦略としてCSVに大きく舵を切ったキリン。企業の事業成長と社会課題の解決の両立を目指し、国内でもいち早く「CSV本部」を立ち上げた同社に、CSVの取り組みに対する考え方について聞いた。
キリン CSV本部 CSV推進部 企画担当 主幹 太田 健 氏(おおた・たけし)
1984年キリンビール入社。東京支店に配属され、その後横浜アリーナなどへの出向を経て、2010年にキリンビールCSR推進部CSR推進担当主幹。2013年より、キリン CSV本部CSV推進部 企画担当 主幹。CSVの創出に向けてキリンビール・キリンビバレッジ・メルシャンの各社と協働中。
全社を挙げて取り組むためCSV本部を新設
キリンは、2012年に、オーガニック成長により持続的に企業価値を向上させる長期経営構想「キリン・グループ・ビジョン2021」を発表した。それに伴い、翌2013年に、キリングループの組織の一新を敢行。ブランドを基軸にした経営戦略を遂行するため、それまで別々の経営体制だったキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの3つの会社を統合した。
その背景について、CSV本部 CSV推進部企画担当主幹の太田 健氏は、若者のアルコール離れや低価格競争の激化をはじめとする外部環境要因に加え、成熟市場におけるブランドの育成や新しい価値の創造などの内部環境要因があったと話す。「特に、ビールをはじめとする飲料は価格競争にさらされており、競争の末にあるのが疲弊であることは目に見えていました。社会としても消費活動が、『価格(モノ)から価値(コト)』へとシフトしていく中で、当社として、飲み『モノ』ではなく飲む『コト』、つまり、飲むシーンや飲み方、商品ブランドそのもののストーリーを通じて、生活者と価値を創造できないかと考えました」。
そのような状況を踏まえ、従来の経営体制の延長ではなく、抜本的な経営方針の転換が必要と考えた同社は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱する「CSV」を経営戦略の中心に据えた。2010年当時、CSR担当役員だった現・代表取締役社長の磯崎功典氏が、よりよい世界情勢の実現を目的に、ビジネスや政治、アカデミアなどのリーダーたちが一堂に集って世界情勢の改善に取り組む「世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)」に参加した際 …