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『嫌われる勇気』著者に聞く「企業にも嫌われる勇気は必要か」

岸見一郎

間違いなく、2014年に最も話題になった本のひとつだろう。『嫌われる勇気』は、アドラー心理学の思想をもって「他人からの評価を気にせず生きよ」と説く。マーケティングの世界では、多くの企業が、生活者から「愛されたい」「共感を得たい」「信頼を勝ち得たい」と日々コミュニケーションを展開している。著者の一人である岸見一郎さんの目に、こうした企業コミュニケーションはどう映るのか。

哲学者 岸見一郎(きしみ・いちろう)
1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の西洋古代哲学、特にプラトン哲学と並行して、アドラー心理学を研究。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアルフレッド・アドラーの『個人心理学講義』『人はなぜ神経症になるのか』、著書に『アドラー心理学入門』など多数。共著『嫌われる勇気』では原案を担当。

ありのままで生きよ
アドラー心理学が注目される理由

『嫌われる勇気』は哲学者と青年の対話形式で進む、アドラー心理学の解説書である。他人の目が気になり、自分に自信が持てない青年が、哲学者に対話を求め、「“トラウマ”など存在しない」「人は変わろうと思った瞬間から変わることができる」といったアドラー心理学の思想を、反発を重ねながら自分のものにしていく物語だ。

「嫌われる」とあるが、嫌われることを推奨しているわけではない。嫌われることを恐れていたら自分の人生が生きられない、人に嫌われるのは自由に生きている証であり、自由に生きる代償でそのくらいは払わなければならない、というメッセージである。

原案を担当した著者の岸見一郎さんは、日本のアドラー心理学の第一人者として知られる。岸見さんは1990年代から国内でアドラー心理学の本を何冊も出してきた。だがなぜ2014年の今になって、アドラー心理学は脚光を浴びたのか。「アドラーは時代を一世紀先駆けしていると言われます。他の心理学とアドラー心理学が違うのは、原因論に立たないことです。過去の出来事が自分の生きづらい原因だと突き止めたところで、これからも生き続けなければならないことは変わらない。風邪をひいて医者に行って、季節の変わり目だからだと原因を分析されても、よくならない。それよりも風邪を治すことが先決でしょう。人生も、今ある問題にこれからどう対応していくのかをこそ考えなければならない。皆うすうす気付いていたけれど、そういうことがこれまで言語化されていなかった。だからこの本で腑に落ちる思いをした人が多かったのではと思います」。

岸見一郎、古賀史健著
『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社刊、2013.12 発行)

世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近かった存在のアルフレッド・アドラーの思想を、哲学者と青年の対話篇形式によって解き明かしていく。

「説得」をやめたとき信頼が得られる

多くの企業が、生活者から愛され、共感され、信頼を勝ち得るためのコミュニケーションを日々展開している。岸見さんの目には、こうした企業の活動はどう映るのか。「万人に感謝される企業のことは信じられない、と言えばいいでしょうか。僕は長く大学で古代ギリシア語を教えていて ...

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