従来のアンケート調査だけでなく、デジタル接点を介して得られるログデータなど、企業が消費者を知るためのデータは多様化、大容量化している。それゆえ、データ活用の知見がマーケティング活動の競争力を大きく左右する時代と言える。インテージはデータ収集・分析・活用のプロフェッショナルとしての知見を活かし、2014年10月23日「Experience INTAGE~新たな対話と共創へ」をテーマにした、フォーラムを開催した。
CMOの役割とデータ活用
2014年10月23日、インテージは東京・渋谷セルリアンタワー東急ホテルにて「インテージフォーラム2014」を開催した。当日は、企業の広告・マーケティング責任者を中心に約750名が来場した。ここでは特にマーケティング担当者の関心が高かった3つのプログラムをレポートする。
各セッションには、マーケティングの最前線で活躍する実務家が多く登壇した。近年、日本でも欧米企業に設置されているCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)職の必要性が議論されるようになってきたがこうした関心を踏まえ、「CMOの役割と企業内のデータ活用について考える」と題するパネルディスカッションも開催された。登壇したのはネスレ日本の常務執行役員でチーフ・マーケティング・オフィサーの石橋昌文氏、電通 マーケティングソリューション局長 丸岡吉人氏で、インテージの村上清幸氏がモデレーターを務めた。
丸岡氏は「プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションとマーケティングの4Pすべてが“変数”になっているのが今の時代。だからこそデータを基にアクションを検証する、実験的アプローチというのも広がってきている」。また、だからこそ「この先しばらくはDMPを含めて、データに関連したシステム領域に、大きな投資がされていくのではないか」との考えを示した。
一方の石橋氏もマーケティングにおけるデータ活用の重要性を指摘しつつも、「ビジネスは人が行うものであって、データが行うものではない。データは大事だが、リサーチはツールの一つであり、マーケターに求められるのはビジネスの成功。データをどう使いこなすのか。どのような仮説を検証するためにどのような調査を実施すべきなのか。この部分をしっかりと考えられる人を育てていく必要がある」と話した。2名の話を受け、村上氏は「インテージでは今年DMPのサービスも開始したが、データを提供して終わりではなく、企業の方たちと一緒に今起きている変化に対応したデータの活用方法を考えていきたい」と展望を語った。
インテージ 村上清幸氏
電通 丸岡吉人氏
ネスレ日本 石橋昌文氏
これからのクロスメディア戦略
続いて「これからのクロスメディア戦略を考える~マーケティングPDCAの進化を加速させるi-SSP~」と題されたパネルディスカッションには、花王のデジタルマーケティングセンター・デジタルトレード室長の本間充氏、アウディジャパンのマーケティングコミュニケーション部 戦略企画リサーチスペシャリストの後藤晋哉氏が登壇。インテージ 執行役員の長崎貴裕氏がモデレーターを務めた。
まず長崎氏から、メディア接触から購買までを同一サンプルで見ることができるインテージのシングルソースパネル「i-SSP」について説明があった。本間氏は、「これまで、広告費の半分が無駄なのは分かっていたが、どの部分が無駄なのか分かる術がなかった。しかし、i-SSPによって広告効果と売上の関係を直接的に見れるようになった」と話した。
後藤氏からは「従来の調査では、テレビCM接触の認知を聞いていたが、これはあくまで『認知』であり、『事実』としての接触とは異なる可能性がある。その点、i-SSPでは、ログデータ形式で収集した『事実』としての接触回数と、アンケートで聴取した広告認知やブランド想起を掛け合わせることができるので、『事実』と『認知』のより詳細な分析が可能」という話があった。また両者からは、「i-SSPを使えば、まだまだ新しい仮説が生まれてくるはず」との期待の声も出てきた。「サンプルサイズの拡大によって消費者のより詳細な行動を見ていきたい」と語る一方で、「サンプル拡大や事例の蓄積を待つのではなく、まず活用してみること。多くの企業でi-SSPの活用が進めば、データの価値向上にもつながっていく」と呼びかけた。これを受け、長崎氏からは、サンプル数の拡大やツールの提供など「i-SSP」をさらに進化させていく考えが示された。
PDCAを全方位でサポート
インテージ 代表取締役社長 石塚純晃氏
その後、インテージの代表取締役社長 石塚純晃氏が講演。石塚氏からは「蓄積されるデータもマーケティング活動のアクションも多様化する中で企業のマーケティングのPDCAを全方位で支援できる体制を整えている」とのインテージの方向性が示された。具体的にはマーケティング活動の「しる→つくる→とどける→はかる」の4つの領域全てをサポートしていく考えだ。特に「しる」の支援には、生活者を「俯瞰」で捉えるだけでなく、インテージが保有する、詳細な生活者のプロファイルと、それに紐づく購買履歴、情報接触履歴、生活者の行動の瞬間を切り取るマルチデバイス・リサーチなど、「i-SSP」の豊富なデータと手法を駆使することで、企業やブランドのターゲット層を発見し、理解する「凝視」も可能にするという。また新しい領域である「とどける」の部分、広告・コミュニケーション領域の支援では、7月に販売開始したDMPサービス「di-PiNK」を取り上げ、ターゲットへの最適なコミュニケーションの実施もサポートするという。講演の最後には「未来に続く扉を見つけ、押し開く、企業の方たちにとって、よき“伴走者”であるため、ファクトを携えた私たちもしっかりと並走させていただきたい」と述べ、講演を締めくくった。
左から、インテージ 長崎貴裕氏、花王 本間 充氏、アウディジャパン 後藤晋哉氏。