「顧客体験価値」とも訳されるカスタマーエクスペリエンスには、クリエイティブの果たす役割が欠かせない。選ばれるブランドを創造するためには、どのようなクリエイティブが必要とされるのか。クリエイティブプランナーとして最前線で活躍する博報堂ケトルの畑中翔太氏に解説してもらった。

Yahoo! JAPAN 「ヤフー トレンドコースター」
世界初のSNS連動型バーチャルジェットコースターとして話題を集めた。
クリエイティブで実現するカスタマーエクスペリエンス向上
スターバックスが一杯のコーヒーと共に、それを提供する「空間」に重きを置くことで顧客の心をつかんできたことは、まさにカスタマーエクスペリエンスの好事例です。一方で、空間創造に限らず、デジタルや付加サービスなど、コミュニケーションにおけるカスタマーエクスペリエンス向上のカギはその企業・ブランドの業態やコンセプトによって様々だと思います。
今回は私が関わった最近の企業ブランドコミュニケーションやプロモーション事例の中から、カスタマーエクスペリエンス向上をクリエイティブで実現するにあたっての3つのキーファクターをご紹介します。
1.Tangibleであること
企業の商品やサービスは時に、静的で、平面的で、統一的であることが多いかもしれません。Tangibleという言葉は「触ることのできる、具体的な、有形の」などと訳されますが、クリエイティブのアウトプットとして、このTangibleという要素を意識することで、“温度ある顧客体験”を創造することが、カスタマーエクスペリエンスの向上に重要な要素です。
Yahoo! JAPANさんと共に実施した『ヤフー トレンドコースター』では、リアルタイム検索で得られたSNS上の投稿件数の推移グラフを、3Dコースとして体感することができるバーチャルジェットコースターを開発しました。
これは「Ride The Trends(トレンドに乗る)」をコンセプトに、通常はWeb上で完結してしまうリアルタイム検索のサービスを、ヘッドマウントディスプレイとドライブシミュレーターを駆使し、ブラウザを越えた“アトラクション”へと変えることで、まさにTangibleで、温度あるリアルタイム検索サービスのカスタマーエクスペリエンスを生み出した事例です。
ここで気をつけなくてはいけないのは、必ずしも「Tangible=リアル化」ではないということです。例えば、企業のキャラクターを着ぐるみにすることはブランドを有形なものにはしていますが、ここで言うTangibleとは、ワクワクして触りたくなる、試してみたくなるものへと昇華させることであり、そこに強いクリエイティブアイデアが必要なのです。
実際、このトレンドコースターも、アミューズメントパーク等で行われた体験イベントでは最大90分待ちという、まるでディズニーランドのアトラクションのような人気となりました。そのアイデアと共に仕組みや演出の細部にこだわり、エンターテイメント装置としてのクオリティを追求したところに、触ってみたくなる、試してみたくなる要素が生まれたのだと思います。
2.Nativeであること

ゲロルシュタイナー 「GEROCK(ゲロック)」
炭酸水の「音」をフックに、気鋭のロック・バンド&映像作家とコラボしたキャンペーン。
ユーザーの興味や体験に寄り添った形で ...