あらゆる商品やサービスのコモディティ化が進む中、顧客は何を基準に商品やサービスを選ぶのか。そのヒントを探るためには、マーケティングの“ルール”の変化に目を向ける必要がある。電通 エクスペリエンスマーケティング部に所属する朝岡崇史氏に話を聞いた。
エクスペリエンス・ドリブンなゲームチェンジが進行している
2013年から2014年にかけての2年間はマーケティングのゲームチェンジが顕在化した象徴的な時期として長く記憶されることになるでしょう。アクセンチュアによる欧州のサービスデザイン会社フィヨルドの買収。世界10カ所にインタラクティブ・エクスペリエンス・ラボを設立することを発表したIBMの動き。またマイクロソフトのジュリー・ラーソン=グリーンやアップルのジョナサン・アイブのような、CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)やそれに相当する肩書きを持つ右脳型テクノクラートがグローバル企業で台頭し始めている事実。これらの「事件」はエクスペリエンス・ドリブンなマーケティング刷新が今や経営者の企業の喫緊のテーマとなりつつあることを暗示しているだけでなく、モノやサービスの成熟化、同質化がとどまることのない状況の中で、ブランド体験価値がブランドの差別化の最大のドライバーになる時代の到来を雄弁に物語っているとも言えます。
今回は、ゲームルールが劇的にチェンジする3つの領域にフォーカスし、論を進めます。
1 ブランディング=カスタマーエクスペリエンスの変革
これまでのブランディングはAIDMAやAISASでいうところのA(注目)やI(興味・関心)を高めることで顧客のブランドに対するパーセプションを改善することが主要なゴールでした。しかしながら、エクスペリエンスデザインの領域ではブランディング=マーケティングプロセスの刷新であり、同時にカスタマーエクスペリエンスの変革を意味します。顧客に売ることがゴールだった時代から ...