コミュニケーション環境が目まぐるしく変化した結果、企業と生活者の間には多様かつ複雑な接点が生まれている。そうした接点において、企業がカスタマーエクスペリエンスの向上に取り組むべき理由について、コンセントの大﨑 優氏に語ってもらった。

顧客の体験価値は一貫性を伴ったものとして扱う必要があり、
チャネルを横断した視点を持つことが肝要。
データで示されるCX向上の必要性
近年、企業にとって、カスタマーエクスペリエンス(以下CX)をどう扱うかという議論は、サービスクオリティをどう上げるか、顧客満足度をどう高めるかというものから、ブランドや事業そのものをどうデザインするかという、より大きな課題へとシフトしています。
米国における調査では、顧客の89%が不満足なCXが原因で他のブランドに乗り換えている、と回答しています(RightNow社『The 2011 U.S.Customer Experience Impact(CEI)Report』より)。つまり、CXのクオリティは、個々の商品やサービスだけの一時的な成果にとどまらず、継続的なブランド構築に対する重大なリスクとして慎重に取り扱うべき課題となってきています。
実際に、世界各国の企業経営幹部へのアンケートでも、有益で一貫した、ブランドにふさわしいCXを提供できないがゆえに生じる損失が年間売上の20%におよぶと推定しています。また、93%の経営幹部が、CXの改善は今後2年間の最優先課題上位3つのうちの1つであると答えています(ORACLE『CustomerExperienceGlobalInsights』より)。
このように企業のCXへの対応は、世界的に見ても注力しなければならない課題として緊迫感が増していることが、データからも見て取れます。
CX向上に有効なサービスデザイン
では、有効なCXを構築するにはどうすればよいのでしょうか。
その答えのひとつは、自社の既存の商品やサービスを基準に最適なCXを考えるのではなく…