ストーリー性あるクリエイティブが人の心を動かす 広告が文化を牽引する世の中へ
映画やドラマのプロデューサーとして活躍している山田兼司さん。映画『怪物』や『ゴジラ-1.0』など、多彩なジャンルの作品を発表してきた山田さんは、広告の文化的側面について一定の評価を示す。より良い広告のあり方やクリエイティブにおける考えを聞いた。
私の広告観
とにかくアイデアの豊かな人である。1999年の「USBメモリ」の発明に始まり、これまで120を超える商品やサービスを発明してきた。「打つ手なし」の難しい局面でクライアント企業から呼び出され、イノベーティブなアイデアで打開してきたことも数限りない。多くの経営者が信任する、その手腕の一端を覗かせてもらった。
ビジネスデザイナー 濱口秀司(はまぐち・ひでし)
松下電工を経て、1998年米国のイノベーションファームZibaに参画。世界初のUSBメモリはじめ数々の画期的なコンセプトづくりをリード。パナソニック電工新事業企画部長、パナソニック電工米国研究所上席副社長、米国ソフトウェアベンチャーのCOOを歴任。2009年に戦略ディレクターとしてZibaにリジョイン。2013年、Zibaのエグゼクティブフェローを務めながら、自身の実験会社「monogoto」をポートランドに立ち上げ、ビジネスデザイン分野にフォーカスして活動を行っている。ドイツRedDotデザイン賞審査員。
肩書きは「ビジネスデザイナー」。松下電工(現パナソニック)で戦略投資案件の意思決定分析を担当したのち、ポートランドに本社を置くイノベーションファーム「Ziba」に参画。2013年には「monogoto」を設立し、クライアントベースでコンセプト設計と戦略づくりを手掛ける。
USBメモリ、企業内イントラネット、火災報知器、生産方式の設計、カスタマーサポートシステムの改革…濱口秀司さんがこれまで手掛けてきた仕事は規模も分野も様々だ。だが、共通項はある。それが「バイアスの破壊」だという。
「バイアス」とは、先入観や人々の思考パターンのこと。「人々がとらわれているバイアスを発見し、壊すこと。それが新しいアイデアを考えるときの僕の方法論です」と言う。例えば1999年にUSBメモリを考案したときには「インターネットや近距離通信があるのだからデータを保存する器はもういらない」「ドライバーなしでUSBメモリを差した瞬間に認識させるのは技術的に無理」といった反対意見があった。しかしご存知の通り、現在ではUSBメモリは最も身近で汎用的なメモリとなった。
火災報知器のケースもユニークだ。コールマンが火災報知器を新しく売り出すにあたり、コンセプト開発の相談を受けた。「まずアメリカのホームセンターの売り場に行ってみました。すると大きな壁一面に、あらゆるデザイン・技術の火災報知器が並んでいた。一体どれを買えばいいの?と途方に暮れる状態です。で、お客さんを見ていると…