日本の広告会社のほとんどが実はハウスエージェンシーであると、日本の広告業界を研究してきた植田正也氏は言う。海外からもたらされたハウスエージェンシー重視の流れと、旧来型のハウスエージェンシーはどう交差し、日本の広告界に何をもらたすのか。
ハウスエージェンシーとは何か
この事実は、あまり知られていないことなのだが、ハウスエージェンシーという組織体は、日本以外には世界中どこにも存在しない。ハウスエージェンシーという名称も日本の広告業界で使われている意味合いでは、存在しない。これは、和製英語である。従って海外でハウスエージェンシーと言っても真意は、通じない。
広告業の最盛期には、日本に広告会社が大小合わせて3000社ほどあった。ほどと言ったのは、正確な数字を所轄の経産省ですらつかんでいなかったからだ。いやそれは、問題ではない。問題は、この3000社の約80%がなんとハウスエージェンシーであったという事実である。これは世界に類がない。
そして現在も広告業界でハウスエージェンシーの占める会社数のシェアは、最盛期の比率と変わっていない。それどころか、ハウスエージェンシーではない広告会社の数が減り、会社数の占有比率は、逆に高くなっている。日本の広告界は、何かといえば電博ADKの大手3社が目立ったため、ハウスエージェンシーは話題にならなかった。しかし実態は、ハウスエージェンシーが数の上では日本の広告界を寡占している。
その結果、日本の広告会社の売上高ランキングベスト50社のうちハウスエージェンシーでない独立系広告会社は、電博ADKを含めて3分の1に満たない。しかし…