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広告を「読む」。

広告を読めば、「人間の営み」が見えてくる。

山本高史

広告を読めば、なんかいろいろ見えてくる。例えば「人間の営み」のこと(後編)。

TOTO(1988年) コピーライター 仲畑貴志

前回の原稿で「広告の善意」に触れた。広告の目的を問われれば、クライアントの利潤の最大化、と答える。そこに変更はない。企業はもちろん、自社の製品やサービスがひとつでも多く消費者に購買されることを希求し、1円でも多い利益を願う。しかし例えば、ウオッシュレットはTOTOの売上に貢献したが、その商品を購入することで消費者は相対的に快適で清潔な生活を手に入れることができ、快適で清潔な生活の総体は快適で清潔な社会をつくる。プリウスはトヨタ自動車の売上に貢献したが、その商品を購入することで消費者は相対的に環境負荷の小さい生活を手に入れることができ、環境負荷の小さい生活の総体は環境負荷の小さい社会をつくる。商品やサービスは基本的に(すべてが、と言えないところが辛いところだ)、より生きやすい人生だけでなく、よりよい社会をも志向していると考えることもできる。

広告は自慢話に他ならないが、それはプロポーズにも似ている。「オレはできる。オレを使えばアンタはもっと幸せになれる。あんなヤツ(現使用商品)なんかやめてオレにしなよ」というような話だ。まるで心変わりをそそのかす略奪者の論法だ。しかしそこには相手(消費者)への疑いようのない愛が見える。そして根源的な善意に裏打ちされたように、しばしばよりよい社会への意思や態度もあからさまにする。

「『人間は、全員疲れているのだ』と仮定する。」

というコピーは、TOTOのために仲畑貴志さんによって書かれた。1988年のことである。ぼくは「日本のコピーベスト500」の選評において、「このコピーはすべてのコピーライターに向けられた一行の教科書である」と書いた。その理由を以下に述べる…。

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