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福里真一×木村健太郎×小西利行「たっぷりアイデアとプレゼンの話」

福里真一×木村健太郎×小西利行

広告コミュニケーションに関わる人ならば、誰もが気になる「アイデアの生み出し方」と「プレゼンの仕方」。この2つをテーマに、ワンスカイの福里真一氏、博報堂ケトルの木村健太郎氏、POOLの小西利行氏の3名のクリエイターが語るトークショーが、9月9日に電通ホールで開かれた。3時間におよぶトークライブの抄録をお伝えする。

左からPOOL 小西俊利氏、博報堂ケトル 木村健太郎氏、ワンスカイ 福里真一氏。

アイデアの出し方、どうしてる?

福里▶ 今日話す3人は、それぞれなぜかアイデアとプレゼンの本を書いています。木村さんは『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』、小西さんは『伝わっているか?』、私は『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』を出しました。そんな共通点もありつつ、この会場のレイアウトを見ても分かる通り、微妙な溝もある(笑)。木村さんは海外に強くて、広告賞もいっぱい取って審査員もやられている。私の方はずっと日本のお茶の間風のCMを作ってきたわけで、そういう意味で真逆な存在でもある。そんな最先端っぽい博報堂ケトルでは、普段どうアイデアを練っているんですか?

木村▶ ケトルの打ち合わせの方法を、僕たちは“重ねる発想”と呼んでいます。誰かが案を出して、スルーされたら、それはダメなアイデア。「それってPRでいうとこうなるよね」「アプリもできるね」みたいに誰かが便乗し出したら、いいアイデア。全員の“ワクワクメーター”が上がったら何か言おうよ!という感じですね。

小西▶ POOLの会議も近いですね。福里さんはどうですか?

福里▶ 私は字コンテをメールで送ることが多くて、複数人で打ち合わせをすることはあまりないですね。かなりひとりぼっちな感じです。昔、佐藤雅彦さんの下についていたとき、有名な「3分企画」というのがありました。佐藤さんが3分計っている間に、その場にいる人は必ず何かアイデアを出さないといけないという。CMのアイデアでも、ネーミングでも何でもいいんですが、3分後に何も思いつかなかったら、その瞬間にすべてが終わる、もう人間じゃなくなる…みたいなプレッシャーがあって。それを思い出しました。

木村▶ 僕もマーケティングプランナーだった時代には、ひたすら案出しをしてました。小西くんも、翌日までに1000案っていう話が昔あったよね?

小西▶ そうそう。プライベートな用件で夜の打ち合わせに出られないと言ったら、許してやるから翌日までに1000案ねって。分かりましたー!って言ったんだけど、1000案ってなかなか出せない。400くらいで頭がどうかなってきて、何とかその日に600案書き上げて、次の日にまた頑張って1200案まで持っていったことがありました。

ひとつの言葉が企画を強くする

福里▶ トヨタ自動車の「もっとよくしよう。」は、木村さんと小西さんが一緒に手掛けたお仕事ですね。

木村▶ トヨタの安全や技術のイメージを高めるというオリエンで、トヨタのDNAであるものづくりに対するスピリットを伝えたいと考えました。小西くんが打ち合わせで「もっとよくしよう。」というコピーを書いてきてくれて、これだ!とその場にいた皆で意見が一致して決まりました。

小西▶ トヨタらしさって、ものすごく地道に一つ一つ積み上げて変えていくところで、それは世界に発信できる日本らしさにも通じる。それを表現しようとしたコピーです。フレーズは短く、見聞きした人の中にきっかけとして残るようなものを、と思っているので、そう考えるとこれしかなかった。

福里▶ やっぱりコピーって大事ですね。「もっとよくしよう。」というキーワードが出ると、パッと先が見えてくる。

小西▶ 福里さんのジョージア「明日があるさ」もそうでしょう。言葉自体がフレームになっている。あの言葉がなかったら、シリーズを続けていくうちに途中でブレてしまうかもしれない。

福里▶ 21世紀を目の前に、90年代の「やすらぎ」路線から、「前向き」路線に変更したいというオリエンをもらって。前向きでない自分が前向きな企画を考えるのは難しい…と思ったんですが、周りを見ると、「プロジェクトX」やモーニング娘。の「LOVEマシーン」が流行っていて、確かにそういう空気はあるなと。前向きソングが何年かおきに大ヒットすることにもヒントを得て、前向きな歌を使えば前向きなCMになるんじゃないかと、坂本九さんの「明日があるさ」を世相を入れた替え歌にする提案をしました。

木村▶ 福里さんのCMは、「宇宙人ジョーンズ」も「TOYOTOWN」もそうだけど、長続きするシリーズが多いと感じます。その秘訣は何ですか?

福里▶ いわゆるクリエイターの方々は、新しいことをしたい欲求が強いと思うんです。でも、私は同じ企画フレームに時事ネタとかゲストとか、いろんなことを入れ込んでやっていくのが面白く思えるというか。ドラマの「水戸黄門」みたいに。CMってテレビ番組と一緒に流れてくるものだから、あまり分けて考えなくていいと思っています。

小西▶ 確かに「宇宙人ジョーンズ」も「TOYOTOWN」も“番組化”していますね。

企画書を書くコツ、通るプレゼンのコツ

小西▶ お2人には、企画書を書く自分なりのコツってありますか。

木村▶ 昔、毎週プレゼンをしていたクライアントの方に、なぜいつも自分のプレゼンは受けがイマイチなんでしょう、と聞いたことがあるんです。そうしたら「その時間は午後だから眠いんだよ。別件のことを考えているし。それに最初は誰も君のことを信用していないよ」と言われて、ああそうなんだと。だから企画書は、そういう人たちの目を覚まさせ、集中させて、信頼してもらえるよう工夫して書いています。

小西▶ 僕のプレゼンは、「難しいのはここです、それをこうすると簡単になります」というのが基本的なロジックです。難しいことを簡単にすると人は喜ぶ、というのが僕の持論で。あと、最初にキーワードを出すようにしていて、その選び方は「相手(クライアント)がうれしいと思うか」「誰かに話すか」の2つだけ。いつもできるだけシンプルに、分かりやすく、皆が動きやすいフレーズを作るようにしています。

福里▶ 私の企画書は、自分が企画を考えていった思考のプロセスをそのまま書いて、だからCMはこうなりました、と話します。それが一番自分も話しやすいし、相手も聞きやすいかなと。

木村▶ 僕は真逆で、一回書いた企画書を、相手の立場からもう1度書き直します。一番効くツボはここで、そのために一番いい方法はこれで、では一緒に体験してみましょう、とカスタマージャーニー風に話すことが多いです。人の企画書ってなかなか目にする機会はないけど、全然違うんでしょうね。今度、こっそり見せ合いましょう(笑)。

この原稿の完全版をアドタイ(http://www.advertimes.com/)で公開しています。

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