今年6月、パリにギャラリー「NAKANIWA」がオープンした。日本各地の工芸品から商品をセレクションし、現地の人々に紹介・販売していく場所だ。日本の美しい工芸品をフランスの生活文化に根付かせていくための情報発信拠点であり、同時にリサーチ拠点でもある。

©Eric Giraudet de Boudemange

© Elodie Laleuf
パリ サンジェルマン地区にオープンした「NAKANIWA」外観。
工芸品をコミュニケーションツールとして売り出す
「NAKANIWA」が位置するのは、パリの中でもハイカルチャー層が集まる地域として知られるサンジェルマン地区。アンティークの店やギャラリーが並ぶ通りから路地に入った少し奥まった場所に、一見日本の工芸品の店とは分からない佇まいで店舗を構えている。中に入ると、ヒノキの白木の肌を活かした什器に、日本各地の美しい工芸品がアート作品のように並ぶ。背筋がすっと伸びるような、気が引き締まる空間だ。
この店舗をプロデュース・運営するのが、「丸若屋」代表の丸若裕俊氏。丸若屋ではこれまで、伝統と現代的なエッセンスをかけ合わせ、企画から情報発信など、幅広く工芸品の価値を新しい形で世の中に届ける活動をしてきた。九谷焼の窯元 上出長右衛門窯とスペイン人デザイナー ハイメ・アジョンがコラボレーションした現代食器やチームラボのアートボックス製作などの仕事で知られている。
今回NAKANIWAをオープンした理由について「パリの人たちに、日本のものづくりの本当の価値を理解してもらいたかった。そのために、日本の本物の情報を発信し、彼らが何に美を感じるのか知るための場所が必要でした」と話す。「世界が認める日本のものづくり」を素直に信じている日本人は多いが、実際に海外に出てみれば、和食店を外国人が外国から見た日本のイメージで運営していたり、プラスチック製の漆の器が売られていたり。とても正しく理解してもらえる状況だとは言えない。そこに危機感を抱いてきた。海外の見本市に出展するメーカーも増えたものの、物質があふれ続ける現代から未来に向けて、もっとリアルな情報発信の必要性を感じている。
「『ものづくり』という言葉に、日本の伝統や品は実は縛られすぎている」と丸若氏は言う。「優れた品とそうでない品の違いは…