金属加工の街として知られる新潟県燕市から生まれた真空チタンの器が、いま世界ブランドに育っている。仕掛け人は、クリエイティブ・マネージングディレクター鶴本晶子氏。強い意志と情熱で、新たな道を切り拓いてきた。

SUSgalleryは真空チタンカップのテーブルウェア。独特の質感と保温保冷の機能を持つ。
やるからには世界を目指す
薄いチタンの真空二重構造。並外れた保冷力と保温力を持ち、軽くて丈夫。さらに、ごつごつとした独特の質感と色合いが見た人を魅了する――。「SUSgallery」は、金属加工業で“燕ブランド”として知られる新潟県燕市生まれのテーブルウェアブランドだ。
「最初から世界のテーブルウェアブランドを作ろうと思っていました」と、SUSgalleryのクリエイティブ・マネージングディレクター、鶴本晶子氏は話す。鶴本氏は、元々ニューヨークと東京を拠点に、現代美術家コラボレーターとして活動。作品制作、マネージメント、企画に携わってきた。あるきっかけで、同社が青山にオープンしたステンレス製品のショールーム(SUSgallery)のディレクターを務めることになったのがブランド誕生のきっかけだった。
「魔法瓶の原理を使って二重構造のカップを作る技術に、非常に可能性を感じました。機能に優れているし、日本のものづくりは繊細でクオリティも高い。ここにコンセプトが加われば、世界に通じる製品になると思いました」。そして考えたコンセプトが、「サステナブルでラグジュアリー」。「金属は100%リサイクルできる、サステナブルな素材です。そこに一見相反するラグジュアリーという要素を持たせ、ありそうでなかったブランドをつくろうと考えました」。
現代美術の世界にいた時も、「どうせやるなら世界を目指す」の意識をアーティストに叩き込まれた。世界市場で現代アートを展開する中で培われたマーケティング感覚が、生活用品市場で活きた。

2008年の立ち上げ時に、鶴本氏が描いたブランドの拡大イメージ。
新宿伊勢丹からはじまった
SUSgalleryのごつごつした形状は、実は…