未来のイノベーターはどう育つのか
トニー・ワグナー/著
「ワークプレイス」の研究を通じ、イノベーションが生まれる場づくりにも関心を持っているという松下氏のお薦めの1冊は『未来のイノベーターはどう育つのか―子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(英治出版)。
デジタル世界はリアルの代替ではない
ソーシャルメディアやスマートフォンが浸透し、いつでもどこでも人と人がつながりあえる時代。日常生活も大きく変わっているが、メディア環境の変化は働く場や働き方にも、影響を与えているのではないだろうか。そんな仮説のもと、「ワークプレイスのメディア論」をテーマに研究しているのが、実践女子大学の松下慶太准教授。メディア論、若者論、コミュニケーション・デザインを専門にしてきた松下氏は、デジタルテクノロジーの進化により生まれたオンラインとオフラインが重なりあう世界観から生まれる、新しい働き方を研究してきた。
「日本でもコワーキングスペースが広がっているが、SNSを通じていつでも連絡を取れるにも関わらず、なぜ人が集まる場に出向くのか。それはオンラインでできることが広がっても、オフラインでの行動の価値がなくなることがないからだ」と松下氏。ただオンラインで過ごす時間が広がり、日常の中でオンライン、オフラインが重なりあう中で、従来からあったオンラインでの行動も違った意味付けを持つようになってきているのではないか、と考えている。
例えば、オンラインゲームのすれ違い通信。他の人との通信を求めて、秋葉原に出向く人たちが多く存在する。こうした例もまた、オンラインの活動があるからこそ、生まれたオフラインの活動の新たな意義だという。
ECショップがなぜ実店舗を出すのか?
また松下氏は「これまでデジタルでできることは…